監査業務一課の加藤です。

最近、各種の経営セミナーや経営関連のブログでもよく話題になっている「経営力向上計画」。「耳にしたことがあるぞ」とか「この字面どこかでみたような…」という方も多いのではないでしょうか。気になってはいるが、どういった内容なのかまでは よく理解していない、という方も決して少なくないと思います。

 

いったい何なのか、と言いますと、中小企業の経営力を強化し「稼ぐ力」を高めることによって、日本国全体の生産性を底上げしていこうという主旨の下、国が打ち出してきた新たな中小企業施策の一つとして捉えていただけたら良いと思います。

 

労働人口減少問題や、国際化する企業間競争などのさまざまな環境変化に対応していくためには、日本の企業全体の99.7%を占める中小企業の生産性を向上させないといけない。
日銀がめざす物価上昇率2%や「強い経済」の実現には、GDPの6割を占める個人消費の活性化がかかせないという現況を鑑みると、従業者数の7割弱が従事しているといわれる中小企業の存在が、大きくクローズアップされてきているということです。

 

その国策を実現すべく制定された法令が「中小企業等経営強化法」。平成28年7月1日から施行されているこの法律は、ずばり「経営力の強化と生産性向上を集中支援する」ために作られたもの
この法律を根拠として、「経営力向上計画」の策定支援事業が現在進行中なわけであります。
「じゃあ、私たち中小企業の経営者は具体的に何をすれば良いの?」というお話になるのですが…。

 

まずは自社の経営状況の分析、そして

経営指標を向上させる計画書を作成し、国から認定を受けること。


例えば、労働生産性をあげるために人材育成や、あらたな人材の登用などを計画に盛り込んだり、ITを活用した管理会計の導入による財務管理システムを構築したり、商品やサービスの見直しから、新たな事業展開を目指したり、設備投資などへの取り組みなどを盛り込んだ「経営力向上計画」を作成します。

 

作成した「経営力向上計画」を、事業所管の大臣宛に申請すれば、約1ヶ月程度の審査期間の後、適切に作成されていれば計画の認定が受けられることになります。

 

 

「経営力向上計画」の認定を受けると

何か良いことがあるのでしょうか。

 

もちろん、策定された計画が認定を受けると、様々なメリットが生じてきます。

具体的には、

1 固定資産税の軽減措置(3年間の固定資産税の課税標準の半減)が受けられます。

2 商工中金による低利融資が受けられます。

3 保証協会の別枠設定や保証枠の拡大が受けられます。

4 その他、日本政策金融公庫のスタンドバイクレジットや中小企業基盤整備機構による

債務保証などの各種金融支援が受けられます。

 

注目度が高いのは、固定資産税の課税標準の半減 でしょうか。

設備投資計画があって年内に認定を取った場合、最大で3年間、固定資産税が半額になるという、キャッシュフロー的にも大きなメリットがあるのですが、軽減措置の対象となる固定資産が「生産性を高める機械装置」に限定されていたりと、いろいろ条件が付いてきます。

「生産性向上」というところで、やはり、製造業からの認定申請が多くなるのも頷けるところではあります。金融支援については、商工中金の低利融資をはじめ、保証枠の拡大や債務保証といった円滑な資金調達支援策が設けられています。

 

その他にも、「補助金」申請の際の優遇措置として審査の点数に加算されたり、追加の支援策の検討もすすめられているので、今後、享受できるメリットは益々拡大していくようです。

 

 

「稼ぐ」ためのたくさんのヒント、それは「事業別指針」にあり。

 

と、ここまで書いてきましたが、では、設備投資の計画や金融支援を受ける予定がないとこの計画の承認は受けられないのかといえば、決してそうではありません。「中小企業等経営強化法」は、本業支援が目的であり、企業の成長、あるいは、生産性の向上をめざす計画を策定することにこそ意義があるのです。言い換えるならば、認定を受けるこそ最大のメリットである と言っても過言ではないでしょう。なぜなら、計画を策定していく過程において「経営力を向上」させるためヒントが提供され、明日の経営課題が明確になるからです。
 

実のところ、申請に際して提出する書類はA4用紙に数枚程度です。

そのうち「計画」に関して考えて記載するのは、実質2ページだけ
それでも何を書いていいか分からないし、作成するだけで一苦労と思われるかもしれませんが、今回の計画策定に関しては、策定の手順や活用の手引も充実しておりますし、また、具体的に「何を」「どうすればよいか」という指針が業種ごとに明記された「事業者別指針」が準備されています

そこには、「稼ぎ方」の事例や考え方が業種別にまとめられており、同業者等のベストプラクティス、いわば、経営力向上させるためのお手本が公開されているわけです。

現在、11業種(製造業、卸・小売業、外食・中食、宿泊、医療、介護、保育、貨物自動車運送業、障害福祉、船舶、自動車整備業)の「事業者別指針」が公開されていますが、「事業者別指針」がない業種の場合でも「基本方針」に基づき申請が可能ですし、H29年度の経済産業省の概算要求の資料で確認したところによると、今後も対象業種は拡大していく予定とあります。

 

同業者がどんな経営課題を抱えているのか、また、解決方法や成功事例を知る機会というのは中々あるものではありませんが、「中小企業等経営強化法」によって情報が広く公開され、多くの企業がそれを共有し、自社の課課解決に役立てていくことが可能になったのです。

提供されているツールや情報を活用しながら、普段とは違った視点から自社の事業を見つめ直すことによって、思わぬ発見や気付きがあるかもしれません。

申請書を書くという行為をキッカケにして、
一度自社の将来設計について考えてみてはいかがでしょうか。

 
監査業務第1課 加藤 智弘

  
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