毎週日曜日の楽しみは「半沢直樹」

池井戸潤氏の原作が、堺雅人さん主演でドラマになりました。
期待以上に面白いですね。

東京中央銀行という架空(?)の銀行を舞台に、騙し取られた5億の債権を融資課長の半沢直樹が取り戻す、バリバリ硬派の債権回収譚。

歯に衣着せぬ物言いで保身に走る上司を論破したり、国税局査察部の統括官と互角にやり合ったり、性善説を信じながらも、やられたらやり返す! 倍返しのスーパーサラリーマンは、血の通った人でありながらも時には鬼と化す。さながら銀行版「ミナミの帝王」といったところでしょうか。

追い詰める方も追い詰められる方も、人として背負わなければいけない業の重さは同じ。
決して、勧善懲悪じゃないんですね、このドラマは。^ ^

余談はさておき、今回もお金に関するコラムをお届けします。

 

リスクを取る能力がない金融機関は衰退する!

「不良債権処理の時代は終わった!」

「新規貸付を積極的に!」

「これからの金融機関はリスクを取って、
どんどん収益をあげていかないと!」

ドラマの宣伝文句でもセリフでもありません。

6月某日。TKC支部会の共催で開かれた「H25年 中小企業支援機関情報交換会」の中で講演された、近畿財務局長 池田篤彦氏の言葉です。

出席していた私はもちろん、税理士の先生方も感銘を受けておられました。
来賓の中には金融機関の方々もいらっしゃる中、あえてそのような発言をされたのです。
出席していた金融機関の方々は、どんな思いで講演を聴いていたんでしょうね。

金融緩和や成長戦略は景気回復のカンフル剤にはなっても、市中にお金が回らないと景気回復には至らない。好況へと向かっている実感がわかないのは、カンフル剤の効き目がまだまだということなのでしょうか。

しかし、お金が市場へと流れつつあるという漠然としていたものが、とたんに鮮明になったような感覚がありました。それほど、池田氏の言葉には説得力があったのです。

もちろん、この言葉の数々は私たちのためだけに発せられたものではありません。池田氏は、銀行の頭取との面談の際にも、同じ事を言われているのです。

貸し先がなければ探す。金利は銀行の収益。どんどん収益を上げて銀行の付加価値を上げていかなければ、金融機関としての存在意義がない。

何とも大胆な講演でしたが、これほどまでに大胆な発言をされるに足る根拠となるものが存在するのです。

 

「金融機関は新規融資に積極的に取り組むべき」と国が推進

平成25年4月30日、金融庁の平成24事務年度の監督方針及び検査基本方針が改正されました。

改正の概要として「顧客企業の経営改善、事業再生、育成・成長につながる新規融資に関する金融機関の取組み状況を検証する際の着眼点を明示したもの」と記されています。

特に、検査基本方針の中で、中小企業融資における検査重点事項として、金融円滑化の一層の推進が取り上げられています。

以下、「平成25年4月30日改正・平成24検査事務年度検査基本方針」より、検査重点事項の中に新規融資に言及した項(今回の改正で新設)がありましたので要約してみました。

(3)成長可能性を重視した金融機関の新規融資等の取組みの促進

「日本経済がデフレから脱却し、力強い成長を実現していくため、・・・・・(略)・・・・・金融機関は、新規融資を含む積極的な資金供給を行い、顧客の育成・成長を強力に後押しするという金融機関が本来果たすべき役割を一層促していくことが求められている」とした上で、

・どのような経営方針で新規融資に積極的に取り組んでいるか。
また、営業の第一線に対して、どのように周知徹底しているか。

・資金需要の見通しや高まりが期待できる事業分野や地域等を定期的に分析し、
その結果に基づき、融資の方針・戦略・具体的な目標等を立てているか。

・資金需要の掘り起こしにあたって、具体的にどのような工夫・取り込みを行なっているか。

・貸付条件の変更等を行った債務者についても、債務者の実態を充分に把握した上で、
新規融資に積極的に取り組んでいるか。
仮に、謝絶する場合には、その理由を具体的に明示しているか。

・貸付条件の変更等の履歴があることのみをもって、新規融資の相談・申し込みを謝絶していないか。

・スコアリングによる定量面(B/S、P/L)の審査に偏重することないようにするため、
定性面の評価等において、具体的にどのような工夫・取組みを行なっているか。

等々。

金融機関がどれだけ積極的に新規融資に取り組んでいるか。そこが金融検査における重要なチェックポイントとして明示されています。

つまり、国が金融機関に対して「もっとお金を貸しなさい」「そのための準備をしなさい」と言っているのです。

 

たゆまぬ企業努力が報われる時代に

これほどまでに国が中小企業支援、特に、金融に関して積極的になるのは、これから国が成長していくためには、中小企業の再生・成長・成熟が必要不可欠だからこそ。

中小零細企業が活況を取り戻さなければ、日本の再生・成長はあり得ない。今回の改正の根幹には、そこに対する期待値の高さが伺えるように思います。

毎月監査に伺っている、とある関与先では、

「いままで取引したことのないR銀行から、新規に取引させてほしいとセールスにやって来た」という話がありました。

また、別の関与先では、

「A信金が新たに借りてくれ言うてきてるんや」
という相談を受けました。

必ずといっていいほど“マル保”付きだったものが、今回はなんとプロパー融資。

私の担当先に限らず、他の担当者からも、プロパー融資、それもかなり良い条件で案件が増えているという話を聞きます。

ここ数カ月、金融機関の対応がずいぶんと変わってきたなあと感じます。はたして、金融機関が積極的にリスクを取り始めた、と見ていいのでしょうか。

“銀行は、晴れの日に傘を差し出し、雨の日に取り上げる”とよく言います。

しかし、今回ばかりは少し状況が違うようです。

銀行から支援を受ける理由。

それは、いずれも黒字、もしくは黒字転換しはじめた企業ばかりです。

先に取り上げた例の企業も然り。

長きにわたって降り続けた雨を、その企業努力でしのいできた企業が、ようやく見え始めた晴れ間の中で、さらなる企業努力により成長しようとしている。

次なるステージを目指すためにはリスクが伴います。そんな積極的にリスクを取って成長して行こうとする企業に、金融機関は“傘”を差し出しているのです。

強い日差しから守るべき“日傘”を!

監査一部門 : 加藤

  
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