オペレーション部門の須藤です。

小学生の頃から唯一続いている趣味が読書。そんな私が最近感情移入しながら読んだ本が、東野圭吾さんの『手紙』です。随分前に新聞で連載されたり、映画化されたりしたので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれないですね。

 

東野圭吾さんと言えば、ガリレオシリーズなど推理モノのイメージが強いですが、この本は犯罪加害者の家族が主人公で、少し毛色が異なります。

 
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強盗を働いた兄 剛志は、決して遊ぶお金が欲しかったわけではない。お金がないことで大学進学を諦めていた弟に、こっそりと入学金を準備してやりたかったのだ。大学進学は、大黒柱として子供たちのために必死に働いてくれた亡き母の願いでもあった。

 

お金に困っていなさそうな大きなおうち、一人で暮らす優しい老女のことは、数年前のアルバイトで偶然知った。その仏間で見つけた100万円を手にし、それ以上は必要ないからと他に物色もせず退出しようした時に見つかってしまう。我に返った時には老女を殺めてしまっていた・・・。

 

兄が強盗殺人犯として捕まり、突如加害者家族になってしまう弟。当然知れ渡る事実に、友人からは距離を置かれ、高校にも居辛くなる。公然と態度が変わる人ばかりではないが、やはり元の関係には戻れない。アルバイト先でも強盗殺人犯の弟と分かると微妙な空気が流れ、結局辞めることに。

 

被害者宅に謝罪に行こうとするも、怖くなって直前で足が止まり、遠くから様子を伺うだけで、結局、謝罪できずに戻ってしまう。

 

一方、兄からは毎月手紙が届く。「元気ですか。こっちの仕事にも少し慣れました」。自分の境遇と比べ、能天気にみえる文面に「誰のせいで こんな思いをしてるんだ」。でも強盗のきっかけは(勝手に、しかも方法が間違ってるとはいえ)自分を思ってのこと。家族思いの兄のことを恨むも恨みきれない。

 

兄のことを隠し、人目を避けるような生活を続け、それでもそこから這い上がるように大学の通信教育部に進学。ふとしたキッカケで夢を追い始める。「こんな世界があったんだ」と思い始めた途端、またも立ちはだかる“強盗殺人犯の弟”という立場。その後も何かを掴もうとするたびに何度も何度も。自分が犯罪を犯したわけではないのに・・・。

 

その間も毎月の手紙は途絶えない。「被害者のお宅に行ってくれたか?」「大学行って就職したんだってな。嬉しいよ」「刑期を終え、出所したときには・・・」。差出人の住所だけで、兄が受刑者だとバレることもあり、もはや手紙は鬱陶しいだけ。いっそ届かないようにと、黙って引越まで行なう。

 

やがて家庭を持ち、立場が変わった時、違う視点で物事が見え始め、心境に変化が・・・。

 
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「罪を償う」とは、どういうことなのでしょうか。反省すれば良い?刑に服すれば良い?被害者に謝罪したり手紙を書いたりする? それでも被害者が望む「事件の前の状態」に戻すことはできません。そんな加害者が精一杯できることとは何でしょう。

 

就職先の社長の「大抵の人間は、犯罪からは遠いところに身をおいておきたいもの。だから、犯罪者やそれに近い人間を排除するということは、しごくまっとうな行為」「君のお兄さんは、社会的な死を選んだ」「君が今受けている苦難もひっくるめて、君のお兄さんが犯した罪の刑。自分が罪を犯せば家族をも苦しめることになる」との言葉も印象深いです。

 

最近は自転車事故なども増え、加害者にしろ、被害者にしろ、事故や犯罪に絶対巻き込まれないとは言い切れない世の中です。万が一そうなったら、また「罪を償う」とはどういうことかを、ずっと考えながら読んでいました。実際にその立場ではないので深いところは分からないとはいえ、登場人物の心情が非常に丁寧に描かれており、兄・弟・周りの人、どの立場の人の言動も理解ができ、のめり込んで読んでいました。

 

ネタバレになるので詳しくは書きませんが、家庭を持ち立場が変わってからのラスト40ページが、この本の真骨頂です。ぜひご一読いただければと思います。

  
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