監査業務第一課の加藤です。

 

日経新聞の小さな広告を見て、その日のうちに本屋に駆け込んで入手

した「捨てられる銀行」という本。

 

2015年07月に金融庁長官に就任した森信親氏。

「型破りのエース」とも呼ばれるエリート官僚が進める金融庁改革。

その本質に迫ったルポルタージュなのですが、そのセンセーショナル

な内容が話題になり、今や重版出来。

金融機関はもちろん、業界内外問わず多くの人々の反響を呼んでいます。

 

「捨てられる銀行」何とも過激なタイトルですね。

 

いったい、銀行は誰から捨てられるの? 金融庁ですか? 預金者からですか?

もちろん「貸出先の企業」からですよ。

そんなことが起こり得るの? と思われるでしょう。

本書を読めば、さもありなん、と誰もが思うことでしょう。

 

すべては過去の否定から。そして、不良債権処理庁からの脱却。

 

森金融庁が掲げる方針は、

「銀行の健全性よりも、企業と経済の成長と資産形成を最大の目的とする」

 

これまでの金融行政は、不良債権処理という大義の元、「銀行の健全性」を追求するあまり、顧客本位

であるべき経営姿勢を崩壊させ、銀行から目利き力を奪っていきました。

 

その結果が、過去の決算状況や財務状況などの定量情報による「格付」や「債務者区分」に依存した融資

スタンスや担保・保証主義をつくり出したといっても過言ではありません。

 

銀行は銀行で顧客の事業に目を向けず、ただひたすらに金利競争とシェアの争奪戦を繰り返し、顧客であ

る企業の方も、銀行の金利にしか興味を示さなくなり、銀行本来の存在意義でもある経済の成長と発展に

資するという機能は失われていったのです。

 

そして、森金融庁がめざす改革は、これまでの過去の否定からはじまり、顧客本位とは程遠い営業や、

際限なき金利競争や安易な貸出規模の拡大を続けるような銀行経営に未来はない、という問題意識を

提示し、企業の成長、強いては、地域経済の発展に資することこそが「銀行の健全性」であり、それを

追求することこそが、金融機関の存在意義であるという強いメッセージを発信しています。

 

捨てられる銀行、生き残る銀行とは?

 

金融庁の行政方針は、「担保や保証に依存することなく、企業の事業内容や将来性を見極める」こと。

過去の財務諸表や資産、担保による融資判断は、あくまでも結果論の話。目を向けるべきは企業の成長

可能性や将来性を評価分析する「事業性評価」であるということを金融機関に要請しています。

 

新たな方針の実現に向けては、中小企業への取引銀行との関係性や取引実態のヒアリング、貸出金金利の

収益分析、地方創生への貢献度合い調査など、銀行業界全体での取り組みをより実現性の高いものへと

昇華させようという動きが活発に行われています。

 

とはいうものの、

これまでとは全く違う概念を打ち出してきた行政方針に、困惑する金融機関も多いはず。

 

とある信金の人に、事業性評価について尋ねてみたところ、

「日常の業務をこなしながらとなると、現場の人間だけではとても対応できません。

それに特化したプロジェクトチームを立ち上げるなどしなければ難しいでしょうね」

 

変革には時間も労力も必要ですが、物理的な可否はともかく、金融機関には、相応の意識変革を迫られる

ことは必至のようです。

 

「晴れの日に傘を差し出し、雨の日に傘を取り上げる」銀行よりも、

「晴れの日にはともに汗を流し、雨の日には濡れない工夫をともに考える」

くらいの勢いがあっても良いような気がします。

 

ある日突然、企業から三行半をつきつけられて、本当に「捨てられる」くらいならば…。

監査業務第1課 加藤 智弘

  
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