平成の徳政令『中小企業金融円滑化法』再延長は

              単なる延命措置か最後のチャンスか ~ 第二回

= 社長さんたちは円滑化法とどう向き合ってきたか =

金融円滑化法が施行されたその年の末。私の担当先のT社長は悩んでいました。
執拗に借り換えを勧めてきたC行が、いきなり融資を断ってきたのです。
そもそもC行担当者の言葉を信じて、借り換えの決断をしただけにショックも大きく、また、その否決の理由も、納得のいくものではなかったのです。

「“土地の含み評価損” それを加味すると、債務超過になる」と。

その理由を聞いて誰もが首を傾げました。
隠していたというのならいざ知らず、毎期決算書も提出し、そこには取得時の価額で記載されている土地です。高い時期に取得した土地だから、評価が下がっているのは周知の事実。

そして、土地は評価益や評価損が計上できない事は、金融機関の担当者なら百も承知だろうに。

何を今さら、という言葉が口をついて出ました。

資金需要の多い年末年始。何とか年は越せても、その後の資金繰りに問題が生じてくるのは目に見えていました。かと言って、他行へ支援を求める時間的余裕もありません。

こうなったら、出ていくものを抑えるしかない。ようやくT社長は決断しました。
「懇意にしてもらっているA行、B行さんには申し訳ないが、リスケの申し入れをしに行きます」

リスケ=リスケジュール=貸付条件の変更。
その言葉に、後ろめたいものを感じるのか、主要取引行であるA行、B行に対する配慮を口にしました。目先の資金繰りもさることながら、リスケ解消後に、両行が従来通りの“お付き合い”をしてくれるのかどうか、という事にまで心配が及んでいたようです。
なるほど。たとえ金融円滑化法の後押しがあるとは言え、施行後間もない当時です。町の社長さんたちは誰もがそんな思いを抱いていたかも知れません。

“ リスケの履歴があるだけで、後の支援を断ってはいけない ”

円滑化法ではそのようになっています。かといって、何の経営改善も見られないままの会社を、金融機関は支援してくれるでしょうか。やはり、そこにはこの法律の恩恵を受けるだけの結果が伴っていないことには、金融機関も手を差し伸べてはくれません。

「リスケ解消後でも、やはり半年以上は様子を見させてもらわないと」親密行であるB行の担当者は、そんなことを口にしたことがありました。半年ならまだいいほうかも知れません。

改善の証がみられても、さらにその後の様子を見る。

これが金融機関のスタンスのようです 。
法律の趣旨を理解し、その目的である経営改善を目指す。景気が低迷する中では、険しい道程であるに違いありません。
しかし

「きちんとした経営計画を作って、リスケ期間中に経営改善を図れば、会社の財務体質は、きっと良くなります」

売上増加要因が見込めない状況であれば、それに見合うだけの費用の見直しを行う。役員報酬の見直しから始まり、仕入れ原価の見直し。従業員の作業効率と人件費の見直し。人は財産。そう考えるT社長は、さすがに人員削減だけはやりませんでしたが、そうして会社から出ていくお金を出来るだけ抑える=出血を止めるために、社長自らが“身を切る思い”で立てた経営改善計画書を携えて、私たちは銀行の扉を叩いたのでした。

そして一年後。T社長の会社はどうなったか?

計画値はやや下回ったものの、借入を起債するほどの資金難に陥ることもなく、身入りの範囲の中での資金繰りで乗り切る事ができました。
二年目には計画値を上回る実績を上げました。返済額の減額という条件変更をしているのですが、この二年間は借入金に依存することもなく、借入金残高も減ってきています。

これは、ほんの一例。決断の速さと、綿密な経営計画。その実績と計画値の乖離の分析など、ざまざまな方法で経営改善に取り組んだ結果といえるでしょう。

では、この二年間で貸付条件等の変更を実施した企業の社長さんたちは、どのように円滑化法と向き合ってきたのでしょうか。

昨年12月に実施された、帝国データバンクの「金融円滑化法に対する企業の意識調査」より

調査結果のポイントは、

・ 金融円滑化法利用企業のうち、50.7%が複数回利用している。
・ リスケジュールの内容は
67.2%が 「返済繰り延べ」を実施
35.0%が 「返済額の減額」
・ 「経営改善計画の策定」当初とリスケジュール後の実績について
14.4%が 「計画を上回っている」
41.7%が 「ほぼ計画通り」
33.9%が 「計画を下回っている」   という回答。
やはり、T社長の会社と同じく、複数回の利用をされている企業が多いようです。

そして、「返済額の減額」よりも、「返済繰り延べ」を選択している企業が7割近くもあります。低迷する景気の中で、やはり借入金の返済が、中小企業にとっていかに負担が大きいものになっているのかが伺えます。

その一方、6割弱の企業が計画値通り、あるいはそれ以上の実績を上げるという結果が出ています。返済の負担が軽減された分の余力を、社内の業務改善や事業再生に力を入れた結果ともいえるでしょう。

T社長の例のように、身を切る思いで再構築に挑んだ社長さんが、多くいたに違いありません。経営判断と努力。とてつもなくパワーのいる作業です。そして、社長一人の力だけでできるものではありません。やはり、家族や社員一人ひとりの理解も大切な要素です。

さて、次回は。
金融円滑化法再延長について、金融機関は何を思っているのでしょうか。これまでの経緯を踏まえながら、その思惑について探ってみたいと思います。

文責 : 加 藤

  
コメント

One thought on “借入を断られた社長がとった行動とは・・・

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