平成の徳政令『中小企業金融円滑化法』再延長は
単なる延命措置か最後のチャンスか ~ 第四回

 

「当行でも御社を支援させていただきます!」と、頭を下げて行く銀行は多い。
「じゃあ、プロパーで融資してもらえませんか」と言うと、途端に渋い顔をする。
そして、マル保(信用保証付融資)を積極的に薦めてくる。

銀行がマル保に前向きな理由はこれだ!d27081b913426c8d7936615839be11fa

銀行がマル保に前向きな理由で最も大きなものは、デフォルト(債務不履行)時のリスク負担。責任共有制度により、銀行も20%の負担がありますが、貸出額の80%は協会が肩代わりしてくれるのです。

では、8割の負担をする保証協会は、代位弁済の原資をどこから調達しているのでしょうか。
それは、日本政策金融公庫(以下、日本公庫)から支払われる“保険金”です。

“信用保険”と呼ばれるその保険とは?

保証協会のリスクをカバーするための保険制度。

保証協会が実行した保証が一定の要件を備えれば自動的に付保され、その保険責任を引き受けた日本公庫は、対価として保証協会から保険料の支払いを受ける。
そして、保証協会が銀行に対して代位弁済を行った時、その弁済を“保険事故”として、代位弁済額の70~90%を“保険金”として、保証協会に支払うのです。
保険の種類によって、てん補率は変わりますが、保証協会も代位弁済分の7~9割を公庫の保険金で担保されている、という訳です。

保証協会の代位弁済額が放棄されない理由はこれだ!

さて、この保険金。実は、返さないといけないんですね。
保証協会は、代位弁済によって取得した求償権を使って、その回収に努めることになるのですが、回収した金額の一部は、受け取った保険金額の割合に応じて、日本公庫に返納しなければならないのです。

なるほど。代位弁済の後、保証協会が債権回収に躍起になるのも頷ける話です。
債務免除の交渉にも応じてくれないのも納得がいきます。

保険金と名を変えていても、投入されているのは“税金”なのですから

 

銀行→(信用保証)信用保証協会→(信用保険)日本政策金融公庫という補完制度

銀行・信用保証協会間の「信用保証」
そして
保証協会が日本公庫に対して行う再保険「信用保険」

これら二つが相互に補完し合う仕組みの総称を「信用補完制度」と呼びます。
この制度が目的とするところは「中小企業の事業資金融資が円滑に行われること」となっているのですが、本当に、この仕組みはうまく機能しているのでしょうか。

実は、この「信用補完制度」には大きな問題があります。

それは、信用保険事業の収支が経常的に赤字であるということ

1997年6月以降、景気後退の影響によって増加し始めた代位弁済に対応すべく、公庫の保険金支払いは急激に増加していきました。それがきっかけとなり、一方の保険料収入との収支バランスが大きく乖離し始めたのです。赤字幅が急激に拡大し始めた1997年から2004年にかけて、政府は累計で2兆3千億円超の出資金を保険事業に投入しました。
しかし、それも一時的な赤字幅縮小にしかなりませんでした。2008年以降、赤字幅は再び増え始め、現在に至るまで決算推移は赤字が続いています。

H22年度の、当期純損失は約8,120億円。この間にも政府は平成21年度中に、2兆円超の出資金を投入、平成21年度には6,000億円超の出資金を投入。平成23年度中には、1兆円超の出資をしています。

たとえ赤字であっても、出資者である「政府」は、不採算部門に財政的支援を続ける。道理で、信用保険業務勘定のバランスシートがキレイな訳です。

参議院調査室作成資料『経済のプリズム』第20号(平成18年3月発行分)の中に「転機を迎えた我が国の信用補完制度」という資料があります。当時作成されたこの資料の中に、とても気になる文言を見つけました。以下要約抜粋。

 信用保険収支の赤字は、中小企業金融を円滑に保つという政策のコストである。…(略)…「制度の赤字はその政策効果に見合うものか」という比較考量の問題であり、もっぱら収支の改善を目的として制度の見直しを行うことは、本来正しくない。…(略)…見直しを先送りしてもよいのではないかという意見も上がっている

赤字が政策のコスト。そういう考え方もあるんですね。まず、一般の企業ではあり得ないお話ですけれども。
“中小企業金融の円滑化支援”の前にはそれも止むなしでしょうか。


足りない資金は、政府が出資。そのしわ寄せは…

毎年、多額の保険金が支払われながら、その回収は遅々として進まず、足りない資金は、政府が出資。そのしわ寄せは…。
「信用補完制度」の見直しという議論の中では、“中小企業金融の円滑化”という言葉が多用されています。しかし、実際のところは、本当に救うべき中小企業は、議論の蚊帳の外に置き去りにされているような気がしてなりません。

30兆円規模とも言われる“不良債権予備軍”が存在すると言われる中、もし、今年の3月で円滑化法が期限切れを迎えていたら…。いったい、どのくらいの規模で“保険事故”が発生していたのでしょうか。
「信用補完制度」を通して、今回の金融円滑化法の一年延長を見てみると、延長の背景にある真意が見えてきませんか。
私たちの国が守ろうとしているものとは、一体、何なのでしょうね。

さて、次回は・・・

いよいよ完結です。混迷する政治・経済状況の中で、生き残っていくためにはどういうスタンスを取ればよいのでしょうか。精神論? 根性論? 私の得意な“浪花節”全開になりそうな予感。お楽しみに。

(文中の説明図は、鹿児島県信用保証協会 及び 日本政策金融公庫のHPからお借りしました)

  
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One thought on “互いに補完し合う、日本の信用保証制度

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