監査業務第1課の加藤です。

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今年1月最後の金曜日、衝撃的なニュースが飛び込んできました。

「日銀、マイナス金利政策を導入!」

 

目を疑いながらも“日銀 マイナス金利”で検索をかけてみると、出てくるわ出てくるわ“マイナス金利政策”関連のニュースが。

 


マイナス金利ってどういうこと?

 
文字通り、金利が0未満、マイナスになることです。
イメージとしては、預金や債券の価値が、時間が経つとともに減価していくようなマイナスの利子率といったところでしょうか。

 
通常時とは逆で、

   「借りた側が金利を受け取り」

   「貸した側が金利を支払う」

           ことになるのです。

 


「えっ! ならば銀行にお金を預けたら、金利を支払わなければならないの?」とか、「住宅ローンを借りたら金利がもらえるのか」、という話になるのですが、たちまちのうちにそのような事が起こるわけでもなく、今回のマイナス金利の導入は、あくまでも市中の銀行が日本銀行に預けている当座預金に付けている金利の一部をマイナスにするというものです。


銀行は日々の業務の中での支払いに備えて日本銀行に当座預金口座を開設しています。そこに預入してあるお金のことを日銀当座預金と呼びます。経済学の用語では「支払準備金」と言われるものです。この支払準備金と現金の総和がハイパワードマネー(強力な力を持つお金)と呼ばれ、日銀が直接コントロールできる貨幣というわけです。


今回決定した政策の主旨は、その日銀が管理する貨幣のうち、市中銀行が預け入れしている当座預金の残高を減らし、マネーストック(企業や家計への貨幣供給量)を増やそうというもの。そのために、各金融機関が預け入れしている当座預金残高に制限を加え、上限を超えた部分にはマイナス金利を適用するというもの。
 

BANKA銀行さん:えっ! じゃあ、日銀さんの当座預金に預けていたら、
      利息じゃなくて手数料を取られちゃうんですか?

 

氏K-1


Kくん:その通りです。

 

BANK

じゃあ、今すぐ取り崩します。自分のところで現金で持つことにします。

 

氏K-1


いえ。それもいけません。現金で持つ分を、お宅のゼロ金利部分から減らします!

 

BANK
え、じゃあ、どうすればいいんですか?

 

氏K-1
貸せばいいじゃん。投資できるところをさがして。じゃんじゃん貸せばいいじゃん!

 

BANK
そ、そんな事。急に言われても…。

 

氏K-1
物価上昇率2%達成のためですから。お願いしますよ。

 

BANK
預け過ぎてもダメ! 持ちすぎてもダメ! 銀行はお金を持ってちゃいけないんですか!

 

 

その通りなんですね。要するに、

「金融機関は、日銀の当座預金にお金を眠らせてなんかいないで、投資先を探してどんどんと市場にお金を投下しなさい。増えたお金が民間投資や消費にまわらなければ、物価上昇もままならないのですよ」

という強いメッセージを、今回の金融緩和政策で宣言しているようなものなのです。

 

マクロ経済学におけるケインズ派の学説に「流動性のわな」というのがあります。金融緩和によって金利がゼロ近くにまで低下すると、投機的需要が無限大になる(誰もリスク資産を買わなくなり、安全資産としての貨幣の保有率を高めようとする)ので、結果、民間投資は増えず、また、所得も不変となり金融政策が無効になるという現象のことを言います。


今の日本の状態が「流動性のわな」の状態に陥っているかどうかについては議論の余地がありますが、日銀のバランスシートを見てみると、そこには、銀行が保有する貨幣がたくさん眠っていそうな場所がありました。どうやら、このあたりに、今回のマイナス金利政策導入の決定的な理由がありそうですね。

 

とどのつまり、お金は天下には回っていなかった。 


2016年1月20日現在の日銀のバランスシートを見てみると、2013年の4月以降「量的・質的緩和政策」の以降に、日銀が買入れた国債の保有残高は205.8兆円の増加。一方で、当座預金残高は2013年3月末から198兆円も増加しています。日銀のバランスシート上、当座預金は負債にあたるのですが、双方の数字がほぼ一致するということは…。


企業業績の回復や設備投資等の需要の増加もあり、金融機関からの借入は、数年前と比較して、とてもやりやすくなった点は否めませんが、2年と9ヶ月程の間で増えた約200兆円ものお金がありながら、我々のお財布の中でその実感が湧いてこないのは、市場に流通しているお金はほんの一部。やはりお金は天上でしか回っていなかったということなのでしょう。


そんな疑問が湧いてくる中でのマイナス金利政策決定が、我々のお財布にもどのような影響を及ぼすのか。


中小企業に対して、金融機関は、どんな対応をしてくるのか。
史上初の試みだけに、その効果は未知数ですが、低金利が続く中で利ざやを稼ぎにくくなった金融機関にとって、さらなる収益減も懸念されるマイナス金利を課せられる金融機関側は、厳しい対応を迫られそうです。


 先行する欧州中央銀行(ECB)や、それに追随するスウェーデンやデンマーク、スイスなどの様子を見ていると、物価上昇の効果はあまり期待できなさそうでもありますが、諸外国の動きにも注視したいものです。

 

監査業務第1課 加藤 智弘

  
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