カテゴリー シンプルコム 2008/10/05

tibusa.jpg世の中は、いいことばかりじゃなくて、きっとつらいことの方が多いのでしょう。でも、心に受けた小さな傷を、噛み締めながら生きていく人間どうしだからこそ、幸せを分かち合えたりするのです。

この短編集にでてくる人物たちは、それぞれに自分の過去に傷をもっています。ちょっとした行き違い、許されない過ち、ずっとひきずっている悲しみ、忘れられない人との思い出。それらが、きっと「業」というものなのでしょう。ふとした瞬間に、その業が表面に顔を出して、人のもろさ、弱さが見えて、心が外にひらき、通い合うのかもしれません。つらい生活の中に、かすかに灯る幸せの光で、でも、なかなか先を照らしてくれるわけではない希望。そのはかなさを、本当に見事に書き出している本だったと思います。

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