監査一部門の加藤です。

例年なら、まだまだ暑さに悩まされているはずが、一気に秋の空気に。
食は進むし読書も進みます。しかし、食も同じ味ばかりを提供されては、箸も進みません。
箸休めも必要というわけで、今回はいつもの金融四方山話から、少し趣向を変えてお送りいたします。

題して

「この秋、ほんの少し仕事の手を休めて

社長さんに味わってほしい池井戸潤氏の小説世界」

 

今回は、数ある企業小説の中から、半沢直樹シリーズでおなじみの池井戸潤氏の作品を取り上げます。
私も全ての作品を読んでいるわけではありませんので、読んだ作品の中から、いくつか「これは!」と思う作品を取り上げてみました。

フィクションだからと言って侮っていてはいけません。キレイ事だと言って切り捨ててはいけません。池井戸氏の作品には、「経営とは何か! 仕事とは何か!」というものに対する本質が語られているからです。

  「最終退行」

池井戸-最終退行銀行という名の伏魔殿。渦巻く権謀術数の数々。陥れられた主人公が、銀行員として、人としてのプライドをかけて組織内に巣食う巨悪に挑む!

こちらは、半沢直樹シリーズの舞台である東京中央銀行が合併する以前。東京第一銀行だった頃のお話。

半沢直樹は出てきませんが(この頃は、まだ平社員だと思います。たぶん)、主役である銀行の一支店長が、内外の敵に喧嘩を吹っかける痛快作。

半沢直樹シリーズと少し毛色が違うのが、犯罪小説の匂いが漂っていること。銀行員でありながら主人公もどこか性悪な感じもあって。銀行員たれども人間、ということなのでしょう。個人的には半沢シリーズよりも娯楽性が高く、非常に面白いと思います。

元銀行員の作者だから書ける銀行内部のリアルな描写は言うまでもなく、そこにフィクションと現実が見事に融合したピカレスクロマン。一気読み必至です。

 

「ルーズヴェルト・ゲーム」

池井戸-ルーズヴェルトリーマンショック後に、あらゆる企業が直面したであろう会社存続の危機に、お抱えの社会人野球チームの存亡を掛けた企業小説。

半沢直樹シリーズと世界観を同じくする舞台で、社長をはじめ、創業者である会長、取締役連中から営業部、総務部、開発部、野球チーム、社員の面々 に至るまで、様々な人々の視点から一つの企業が再生するまでを描いた群像劇。

立場の数だけ意見がある。皆それぞれに言い分がありますが、どの視点に立って読んでも、展開される論理に得心がいってしまいます。

こちらもドラマ化されましたが、ドラマでは唐沢寿明さん演じる社長の視点を中心に描かれていましたので、原作は、また違った楽しみ方ができます。

しかし、最後のオチには、思わず笑ってしまいましたね。

 「下町ロケット」

池井戸-下町ロケット大企業の組織の論理 vs 町の社長さんのブレない信念!

取引先に見捨てられ、メインバンクにも見捨てられ、倫理もへったくれもない大企業の横暴に晒され、それでもなお、夢を諦めなかった中小企業の社長の成功物語。

これもまた一気読みしてしまいました。

まるで、経営戦略のお手本を示すかのようなストーリー展開と交錯する熱い人間ドラマが、ページをめくる手をひと時も休ませない。

「会社は誰のものか」という問いに対する答えが、ここに書かれているような気がします。経営者はもちろん、会社で働くビジネスマンにも読んでもらいたい一冊。ちなみに、こちらもWOWOWにてドラマが放送されていました。

「ロスジェネの逆襲」

池井戸-ロスジェネ半沢シリーズの第三弾。

出向先でも、その暴れっぷりはご健在の半沢直樹。今回は、バブル世代とロスジェネとの“世代論”にも言及する場面が出てきますが、そんな世代論も超えた半沢直樹の八面六臂の活躍が楽しめました。

後輩に“仕事の流儀とは”を伝えていくその姿。説得力のあるその言葉の数々に、読みながら思わずページに付箋をうってしまったことは言うまでもありません。倍返しの半沢も良いですけど、ビジネスの流儀を講釈しながら、後輩育成に邁進する半沢直樹も良いですね。

タイトルの「ロスジェネの逆襲」の、本当の意味が語られるラストも圧巻。

 

「銀翼のイカロス」

池井戸-銀翼のイカロス

言わずと知れた半沢シリーズ最新作。

まさに、時代劇の勧善懲悪パターンを踏襲したこのシリーズ。
結局、最後はそうなっちゃうんだよなあ、と先が読めてしまうにもかかわらず、最後まで一気に読み進んでしまいました。

今回、半沢直樹が挑むのは、シリーズ最大の敵。
そして、あの金融庁の嫌われ者も再登場。
でも、今回は何か様子が変なんですよね、金融庁のオネエ検査官が。

お話のモデルとなっているのは、あの航空会社の再生計画です。
誰がどの人物のモデルになっているのかもわかってしまう親切設計。

“ナショナルフラッグキャリアは、再び夢を乗せて日本の空を飛ぶことができるのか”

一つの航空会社に関わる、すべての人々の夢と思いを背負った半沢直樹が、人脈を活かした戦略で超大物を追い詰めて行く。その彼のブレない信念は、もはや一銀行員を超えて、行き着くところまで行き着いた感じです。

これから先、このシリーズは、経済ビジネス小説じゃなくてファンタジーに分類することにします。

池井戸-株価暴落この秋からは、WOWOWで「株価暴落」がドラマ化されます。

映像化は、原作ファンとしては嬉しい限りなのですが、池井戸作品の本質は、やはり活字の中にあります。

巧みな描写で描かれるのは、中小企業が抱える悩みや問題、そこに生きる人の悲喜こもごも。行間からにじみ出る悲壮感や、疲弊したその世界観は、作者が銀行員時代に目の当たりにしてきた現実。決してフィクションなどではない。そして、そんな中でもがき苦しみ、時には笑い泣きながらも成長していく人々の姿も、また現実であることを痛感させられるのです。

だからといって、決して重くならない池井戸作品。サラッと読めて、ためになる。そして面白い。遅読の私が、2、3日中に読み終えてしまうほどの読みやすさも、人気の秘訣でしょうね。

秋の夜長に一冊。手に取って読んでみてください。

Audit Department 1st T.Kato

監査業務第1課 加藤 智弘

  
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