genkin監査一部門の加藤です。

物価上昇率2%の目標を掲げる日銀。

その第31代総裁 黒田東彦氏が今年9月に、テレビ東京のニュース「ワールドビジネスサテライト」に生出演していました。

キャスターからの「追加の金融緩和方法はあるのか」という質問にこう答えたのです。

「金融資産は日本の市場にたくさんありますから」

 

昨年4月の異次元緩和から、毎月のように国債やETFを市場から買い入れて金融緩和を続ける日銀。

その効果は、累積的に現れているという。

そして、黒田総裁のテレビ出演から1ヶ月半後の10月31日。

日銀は金融緩和策の拡大に踏み込んだのです。

その日の日経平均は一時800円超まであがり、為替相場は一時111円代へと円安がすすみました。

日経平均・為替

株高や円安になっても、喜んでいるのは投資家や大企業だけだという市場からの声も聞こえてきます。

円安による輸入原材料調達コスト上昇や消費税増税、夏の天候不順などによる消費の冷え込み。

負担を強いられる中小企業や、なかなか賃金があがらず豊かさを感じることができない個人層。

金融政策によって過敏に反応する金融市場と、長く時間をかけて効果が期待される政府の成長戦略との間では、期待される効果におのずと時間差が出てきます。

結局、お金持ちだけが得をしているような。

しかし、そんな悲観的なことばかりなのでしょうか。

政府が成長戦略として掲げているものは


~来年度の概算要求から施策動向をつかむ~

 

アベノミクスが掲げる、日本再興戦略における達成すべき成果目標は、

・ 現在、約5%の開業・廃業率を10%台に。

・ 2020年までに、黒字中小企業・小規模事業者を現在の70万社から140万社へ倍増させる。

・ 約1万社の中小企業が海外展開している中で、
  2017年までに新たに1万社の海外展開を実現させる。

とし、これらの達成のために「起業創業の促進」「事業承継・事業引継・廃業の円滑化」などの施策を推進し、中小企業の新陳代謝に資するとあります。
 
今月14日には衆議院選挙が行われ、アベノミクスの真価が問われるようですが、その真価の如何はさておき、各府省庁からは、すでにこれらの施策に対応する予算案が、H27年度概算要求として財務省に提出されています。

中小企業対策費として政府が予算計上しているのは、要求ベースで2,416億円。そのうち中小企業施策の中枢を担う経済産業省が計上しているのが1,295億円。H26年度の1,111億円より16.5%の増加です。


中小企業対策費

中でも、小規模企業関連振興予算の枠組をみてみると、H26年度の76億円→H27年度は175億円と前年比2.3倍の予算が計上されています。

また、H25年度に引き続き、H26年度も製造業を中心に注目が高まった「ものづくり補助金」に替わる新たな補助金として「革新的ものづくり産業創出連携促進事業」に112億円、創業支援では「ベンチャー創造支援事業」で47億円、創業・第二創業を支援する「創業・第二創業促進補助金」が新設され、25億円の予算が計上されています。

海外展開では、中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業として、25億円の予算化が見込まれています。

これらは、小規模事業者対策の抜本的な強化と、中小企業・小規模事業者の活性化をねらいとして、「新しい日本のための優先課題推進枠」事業に位置づけられています。

成長戦略における成果目標や概算要求から見えてくるのは、中小企業全体を活況へ導くという政策ではありません。全体の底上げは金融緩和政策が担い、そこから中小企業全体を革新的に発展させるのは、個々の企業努力に委ねられているのです。

参考 「平成27年度経済産業政策の重点」P21-23 )

意志あるところに、道はひらける

景気が悪い。思うように回復していない。国は何もしてくれない。

はたしてそうでしょうか?

お金は天上でまわっているだけなのでしょうか?

月次監査訪問の折、「銀行から頻繁に『お金を借りて下さい』と言われているんです」という社長さんの話を、よく聞くようになりました。

借りたくても、金融機関からなかなかいい返事をもらえなかった企業が、企業努力による業績改善の結果、新たにお金を借入できるようになったケースも出てきています。

金融機関は、お金を貸し出せる企業を探しています。

政府も我が国の中小企業施策において、様々な政策を構築し、その後押しをしようとしています。

しかし、かつての中小企業円滑化法のような後ろ向きな政策や支援は、もうやらないでしょう。

「金融支援」ではなく、自社の経営について真摯に取り組む経営者を支援する「経営支援」へと舵が切られているのです。

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株高や円安になっても、喜んでいるのは投資家や大企業だけだと言う前に、お金がまわり始めている兆しを察知し、お金を取りに行く努力をしなければならないのです。

「手を差し伸べてもらう」という、待ちの姿勢では何も起こらない。

そこに手を差し出すか、差し出さないか。

言わんとすることは、ただひとつ。

『意思のある経営者になりましょう』

大企業のように大きな資本力を持たない中小企業にとっては、まだまだ回復基調の恩恵を受けるにに時間がかかるかもしれません。業績改善や事業継続、事業の承継など、解決しなければならない課題を抱えている企業はたくさんあります。

それでも、足元だけを眺めていては、自社のまわりにある大きな森の存在に気づきません。

一度、視線を上げましょう。

そして、森の存在に気づいたら、その森がどのように変化をしていくのかを見極めてみましょう。

そこに息づく自社の存在を改めて見つめ直すきっかけにもなり、問題解決の糸口を見出すことができるかもしれません。

会社を元気にする力を得るための信念と、大局を見極める視点。

そういう企業にこそ、チャンスが訪れる時代になったような気がします。

Where there’s a will,there’s a way.


監査業務第1課 加藤 智弘

  
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