2011.1.25

カテゴリー 読書感想文

はじめて「ネタバレ」で感想文を書いてみようと思います。

というのは、この小説がでてからだいぶ時間もたってますし、なにしろ映画化されてますので、観た人もたくさんいるというのがひとつ。
もうひとつ、僕は映画は観てませんが、小説の方で、たぶん「読み違え」をしている人が多いのではないか、と思うからです。

とてもいい小説です。ひとが、他人を思いやることについての、表現がとてもやさしくて、何度も涙ぐみながら、やさしいよなあ、人間てすばらしいなあ、と感じられる小説です。
あと、文庫版のあとがきは、広末涼子です。
なかなか素直で、いい文章ですね。小学生みたいです。
さすが早稲田大学!と感心しました(してねーじゃん)。


さて、ここからネタバレします。

内容バラします。僕の解釈です。読んでない人は、この先は読まないように。


この小説ですが、結局、
「娘がお母さんのフリをしている」
という解決なのです。
そういう風に、物語を読み直してみてください。
ところどころに、ヒントもちりばめられています。すごい構成力です。
で、そこに主人公と一緒に混乱させられる読者、という見事なトリックになるのです。
小説を読む醍醐味の、もっとも大きなところですね。
大体、交通事故で、娘と母親の人格が入れ替わる、なんて、ちゃんちゃらおかしいじゃん。昔「転向性」とかいう、すけべなSFがあったけど、あんなレベルと一緒にしちゃあ、この小説が気の毒です。で、日本推理作家協会賞までとってるんです。リアリティのかけらもない小説じゃあ、こうはいかないでしょう。
「おまえは、霊とか魂とか信じないから、そういうことを言うんだ」と、たまに言われることがあります。
生まれ変わり、輪廻転生ねえ。
僕は、信じないのではなく、そんなものよりも、人間はもっと奥深くてすばらしいものだと思ってるから、そーいう話をしないだけです。
たまに、「うちの子が、聞いたこともないチベットの言葉をしゃべった」とかいうニュースがあるでしょう。アレです。
きっと前世がチベット人だった、てやつです。前世の記憶、てやつです。
絶対に、違います。
そんなもん、ありません。
子供は「どこかで聞いたことはある」んです。
それを真似してるだけ、または、もしかして意味すらわかっているかも知れません。←ここがすごいとこなのに、チンケな妄想で、それを否定してるのです。

子供は、大人(親)が大好きです。
大人を喜ばせたり、驚かせたり、そういうことを無意識にするのです。だから、少しでも脳にインプットがあった情報は、すぐに解釈され、応用されるのです。
ほんの数秒見た、または聞いただけで、世界の仕組みを理解してしまうのです。で、これは年端のいかない子供にこそ備わっている能力だと思います。
それなのに、どうして人間の可能性を、そこに感じないのでしょうか?
どうして霊とか魂とか、わかりにくくて見ることも聞くことも感じることもできないものを持ち出すのでしょうか?
そんなものよりももっと崇高で、複雑だけど単純な真理。
ほんの小さな子供が、そういうものを持っているのだと気づくとき、人間の持つ無限の可能性について、思いをはせることができるはずです。
長くなりました。
だから、この小説も、そういう謎解きで読んでみてください。
ショックを受けた父親を守るために、無意識に母親のフリをする娘。
このやさしさ、そしてたからかに謳われる人間賛歌。
本当に見事な小説に仕上がっているはずです。

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