このお話の後日譚はこちら→「福島は帰れ!を拡散する人びと」

さらにつづきはこちら→「NHKアナウンサー・堀潤の功罪」

もし、こちらで取り上げたツイートの内容が、事実に基づくものでしたら、すぐに謝罪します。
とてもデリケートな部分に踏み込みますが、ご容赦ください。

まず、5月2日に、こういうツイートがあり、瞬く間に拡散していきました。
リツイートした人も、多いかと思います。

ツイートA
[拡散希望]福島県の知り合いの方が、子供が外で遊べないから車でディズニーランドに連れて行きました。車に戻ったら「福島から出るな。」と落書きされてました。傷も付けられていました。福島県民は悪いの?放射能はうつらないよ!!そんなことするのは人間としておかしい。本当にショック。

この情報は、どうも話が出来過ぎていて、にわかに信じられなかったのです。

  • ・片道6時間もかかり、日帰りじゃ行けないので、他の場所ではないか。
  • ・ディズニーランドの駐車場では、早く会場に入りたいので、人の車なんか気にしない。
  • ・駐車場は、係員が誘導するし、ちゃんとパトロールする警備員さんもいる。
  • ・ディズニーランドには、苦情は一切はいっていない。(インフォメーションセンターにて確認)
  • ・この手の話の特徴として、「知り合い」の話で、写真などの証拠もない。

というわけで、限りなくデマに近い情報、と分類しておいたところ、

などのリツイートがつくようになり、2chでもちょっぴり・・・(以下略)。
で、元ツイートは削除されました。

ツイート元の本人に直接、何故消してしまったのか?と尋ねると、

「私です^^リプライが多くて対応出来なくなったので、消してしまいました><」

という答えが返ってきました。予想外の反響に、びっくりしたのでしょうね。
そして本人からは、「どこの駐車場で落書きされたのか?」など、詳しい部分については、

「母の友人の事なので詳しくは分かりません。福島県の人は同じような経験沢山してるみたいです…」

やはり、伝聞の域を出ない情報でした。

でもちゃんと、「ネタ元はオレ」と言えるあたり、たいしたもんです。マジで。
この人は福島県の若者です。現地の悲惨さを伝えようと、懸命になっています。
もしかすると、この話自体、半分デマかも知れないよ、消したのはいい判断だよ、勇気あるよ、と教えてあげると、

「ありがとうございます^^私もこうやっていろんな方に元気を貰ったり、励まされたりしています。本当にありがとうございました^^」

との返答でした。

しかし、ブログに引用している人は、まだまだ大勢いますし、引用ツイートはあちこちに残っています。

罵詈雑言にあふれているページもあります。
不確定な情報を元に、人々が傷つけあっています。
こんな情報あったら、福島の子供は怖がって、ディズニーランド行かなくなるじゃん。

それでも、「ディズニーランドで落書き」ねたは、一度収束しました。

 

そして5月13日に、

ツイートB
母の友人が震災以降お子さんに何かしてやりたいと考えて、ディズニーランドに連れていったんだって。2ヶ月ぶりに家族で一緒に羽根を休めた後、さぁ帰ろうと駐車場に行くと車に「福島は帰れ」と落書きされていた。笑顔だったお子さんは一転して大泣きしたって。昨日の母からの電話での話。これが現実。

というツイートがたちました。

ツイートAと、比べてみてください。
前半の構成が、そっくりなことに気付くでしょ。

さらに、この情報伝播の経緯です、

お母さんの友人 → お母さん(電話) → 本人

という伝わり方で、ほとんど一緒。
この件が事実だとすると、

1.ツイートAとツイートBの被害者は、同一人物である
2.東京ディズニーランドでは、同じような行為がたくさん行われている

というセンで考えられますが、考えにくい。というわけで、

3.ツイートBのお母さんの友人が、5月2日のツイートAのようなことを、お母さんに話した
→ さらに、それをお母さんがツイートBの作者に話した

というのが、妥当なのではないかと思われます。
つまり、福島県内に「ディズニーランドで落書きされた!」という都市伝説めいたものがあるということです。

ツイートBについても、作者本人に聞いてみました(無茶するねえ)。
ついでに、ツイートAの存在と、それが削除されていることも教えました。
その返事です、

ツイートC
削除してませんよ。そんなめんどいことしない。そしてリンク先の文章脚色してるのは社会人なら笑えない話だよね。RT@hidejiroo: さらに、この元ツイートは既に削除されています。「あおりネタ」だった可能性もあります→ http://t.co/WhNzVHA

どうも、自分のツイートBが先で、ツイートAはそれを脚色している、と考えているようです。
「車に傷」「放射能」というところね。

このツイートBも反響がすごく、たくさんの方が反応しています。
作者の友人関係と思われる人も、からんできます。仲間内でも、「ディズニーランドで落書き」という前提は疑われることなく、事実になっています。

ツイートD(友人)
イタズラですまされない行為で、許されるものではないけど、その気持ちを考えるのは大事だね。不安な気持ちをぶつけて、少しでも軽減させたかったのか、もし複数人でやったなら、自分とその周りを一時的に優位と錯覚させることで、平静を保とうとしたのか…

 

ツイートE(作者)
証拠は?画像は? って言う人に満足できる情報を出したとして、その人が認めてくれたとして、その次に起こすアクションがやられた方をどうにかして励ますためのなにか、だとは思えないよな。

 

ツイートF(友人)
そうだね、でも第三者は直接励ませないからさ。ツイート広まって、それが各々考えるきっかけになってくれればと思うけど。証拠とか画像って言う人も、震災で色々デマとか広まって過敏になってしまってるんじゃないかな。

 

ツイートG (作者)
やった人のことはどうでもいいよ。誰なのかその意図がなんなのかは絶対にわからないんだから。それよりも、やられた方の気持ちに寄り添うにはどうしたらいいかで俺は悩んでるんだ。 分かってたけど、その視点に立ってくれる人って少ないんだね。

――このやり取りを見ると、この作者は、

1.自分の聞いた話が、とにかく真実だと思っている
2.そのうえで、被害者に同情し、心を痛めている

ようです。

この、独りよがりと偽善。「被災者かわいそう」とか思ってますが、実際は被災者を見下して優越感に浸っているだけ。

このツイートは、放射能のように拡散し続けています。まさに情報のメルトダウン(笑)

こちらの作者Bは北海道に住んでいて、実家が被災したそうです。お母様から「友人の話」として、このネタを聞いたわけですね。言ってみれば「半分当事者」ということで、不確かな情報を垂れ流しているわけです。
安全地帯にいる人には、現地の微妙な感覚がわかりません。
いつイジメ(風評)の対象になるかわからない不安。
そしてイジメられないように、外に向かって否定的なウワサで防御する。
しかし、不安から生まれたツクリ話は、いつ自分に向かってくるかわからない。
だから、現地にいるツイートAの作者は反応の多さに驚き、自分のツイートを削除したのです。

作者Bが、もしこのままツイートを消さずにいる場合、本来なら、その責任が生じます。
それはまず、お母様の友人に、直接事実関係を聞くことでしょう。
ポイントは、

  1. 日帰りで行ったのか、泊りがけだったのか
  2. どこの駐車場で、落書きされたのか
  3. 写メは撮ったか

おそらく事実関係は把握できないはず。
ツイートAと同じく「福島ではそういう話があるよ」ということになると思われます。
そして速やかに、元ツイートは削除すべきです。そのための公式リツイートです。

ほぼ1週間経った現時点(5月18日)で、元ツイートの削除は行われていません。
http://twitter.com/#!/yuyanoyuya/status/68863970118877184
作者にも、削除する気はないようです。

 

まとめ

風評被害がひどい!と巷で言われています。
風評による差別で、傷つく人たちがたくさんいます。

でも、こういうツクリ話も、それに参加することも、風評のひとつではないでしょうか?

「福島県民は実際にいじめられてるのだから、嘘ネタでも本当っぽいなら許される」という感覚。

ツクリ話までして、被災者は同情されたいなんて、思っていません。
さらに言えば、同情なんかされたくないんです。
フェアなところまで引き上げてもらえれば、あとは自分で頑張るのです。

自戒を込めて、書きます。
事実でなくても、「かわいそう」で「ありそう」な話だったら、信じて他人にもひろめる。
それは、現地で踏ん張る人々を、実は軽んずる行為なのです。
だからせめて、発作的にツイートするのではなく、内容を吟味してから情報発信をしましょう。

そして、詳しくわからないツイートは、さかのぼって削除しましょう。

ほんのワンクリックでできるじゃないですか。面倒なこと、なにもない。

 

福島県に友人夫婦がいます。東京出身で、子供もいます。でも、学校の先生をやっていて責任ある立場なので、逃げるというわけにはいきません。現地に残って、他人の世話をしなくてはいけません。世話好きで、お人よしなヤツだから、あちらこちらで便利に使われているはずです。どうか彼が消耗しきってしまいませんように。どうか家族で、健康であり続けますように。

 

(文責)田辺秀司郎
ご意見等はTwitterでどうぞ→ http://twitter.com/hidejiroo

 

 

【おまけネタ】 卵までぶつけられるらしいよ

ある有名人ブログのコメントより
http://ameblo.jp/mikio-date/entry3-10884881309.html#comment_module

27 ■伊達さんhelp
いつも福島のことも気にかけていただき、ありがとうございます

実は先日、母の友達の娘さんが那須ハイランドパークに行ったら…
車のフロントガラスが割られて、『来るな』などと書かれた紙が挟まれていたそうです

さらには
ディズニーランドの駐車場で、その車のまわりだけ1台も車が止まらず、さらには卵がぶつけられていたとのこと…

理由はいわきナンバーだから

いろいろ聞いていましたが、まさか噂だけだと思っていたのでショックです

福島の原発は関東の電気を作っているのに
何でその関東でこんな目にあわなきゃならないんですか

これじゃあ福島の人は怖くてどこにも行けないです

実際、ゴールデンウイークに鶴ヶ城に行きましたが、県内ナンバーばっかりでした。

いわきは全然放射能ないのに何で

どうしたらいいか
わかりません

伊達さん
あたしたちはどうしたらいいのでしょうか..
**ゆきパン** 2011-05-08 03:20:31

で、このコメントをしたと思われる方の、「先日」あたりのブログ↓
http://ameblo.jp/yukipie-yam/day-20110507.html

僕には、なにがなんだかわからなくなってしまいました。誰か検証してください。

コメント

9 thoughts on “福島は帰れ!と言われるディズニーランド

  • 774 より:

    車に落書きされたり、
    卵がぶつけられたりしていたなら、
    泣き寝入りせずに警察に届けるべき。

  • 通りすがり より:

    今日の堀潤さんのつぶやきです

    nhk_HORIJUN 堀 潤 Jun Hori
    福島で取材中にとても悲しい話を聞きました。その方は震災後ようやく生活が少し落ち着いたので家族と一緒に首都圏にある遊園地に車で遊びに行きました。お子さんが楽しみにしていた場所です。家族で楽しく過ごし、駐車場に戻ると、車のガラス窓が全て割られていたそうです。誰がそんな酷いことを。。。

    • NHK より:

      これもすごい勢いで、拡散してますね。NHKのアナウンサーだから、確実な情報なのだと思いますが。

  • 774 より:

    真偽は知りませんけど。
    過去に流行った、
    「【緊急】捨てられた仔猫の里親さんを探しています」系のチェーンメールと同様の香ばしさがあることは否定できないと思う。
    この場合は、
    ・送信者に確認してみると、
     「いや、私も別の人から頼まれたんで…」となって、
     いつまで追いかけても「仔猫」にたどり着けない。
    ・周辺にメールを流している人々は、
     微力ながらも親切心を発揮しようとしている。
     (あるいは小さな正義を実現しようとしている。)

    まぁ、
    他人の親切心を逆手にとって
    いたずらのネタにする人がいるとすれば、
    その人は「残念な存在そのもの」ですけど。

  • より:

    もうツィッター禁止でいいと思う、もしくは個人証明必須&拡散元特定出来る体制での運営。

  • 匿名 より:

    地震のときとかも拡散希望!とかよくやってたけど
    1次発信以外の情報はデマばっかりだったよね
    そのくせみんな善意でやってるつもりだから始末に悪い
    プルタブとかペットボトルのキャップの話みたいなのと一緒でさ

  • 匿名 より:

    善意のつもりだからタチが悪いね。
    デマかもよと指摘されても「私が言ったんじゃない、RTしただけ」
    「でもそういうこともあるかもしれないでしょ」
    でミスを認めない。
    ほんと、善意は時には凶器にしかならないよ

  • にるる より:

    検証ありがとうございます。こちらに避難している方々が、この手の経験をした人を聞いたことがないのに、マスコミは大きく大きく報道しているといいます。一方、自分たちは、放射能の不安を言うと、現地で頭がおかしいと言われた。このような差別やいじめは一切報道されない。
    避難先でいじめられるとか、車にいたずらをされるとかを煽ることで、福島の人々に避難するといじめられるよと脅して、避難や保養をさせないためではないのか、という感想をよく聞きます。

  • […] 福島は帰れ!と言われるディズニーランド – ファームコンサルティング | 2012.07.31 22:12 […]

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