saigetsu.jpg幕末、明治維新を経て、明治の新政府が誕生するその時代、多くの才能ある人間が活躍しました。
江藤新平は法律の土台を作った人で、刑法はドイツ、民法はフランスを手本に、日本の法律はできていったわけですね。
「維新」が起こって、旧体制が崩れていく。今まで階級の低かった人間も、才覚ひとつでのし上がっていける。

江藤新平は極貧の境遇から、一時は死罪になりかけたり、妻が木の実を山でひろって飢えをしのいだりしていたところから、新政府のなくてはならない要人に名を連ねるまでになっていきます。
「江藤新平が欲しているのは権力である。権力をつかまなければ、この世でなにごともできない。たとえば画家が筆を欲するように江藤は権力を欲している。権力という筆があってはじじめて、江藤はこの世を画布にし、思うままの絵をかけるのである。」
新政府が樹立し、司法卿として権力をつかむ江藤ですが、その政府はすでに別の勢力の持ち物になっていました。薩摩と長州の両藩が、その重職のことごとくを占め、権力を弄んでいます。権力が集中すると、腐敗が起こります。すでに維新という大儀を離れ、官僚が政治を支配する時代になっていたわけです。いわば維新はクーデターで、その志の果てにできたのは、火事場泥棒のような政府だったわけです。
やがて江藤は、大久保利通という怪物につぶされていくのですが、そのあたりの顛末も、すさまじい逃避行あり、政治の裏切りあり、非公開裁判あり、残忍な処刑(リンチ)ありという、壮絶なものでした。その中で、自分のちからのみたよりに、論理をひたすらに貫いていったこの人物に、やはり感慨はひとしおで、このような人物になってみたいとも思うのです。文庫で約700ページ。司馬遼太郎がひとりの人物に対して書いた分量としても、かなり思い入れの強い作品だと思います。

さて、佐賀(あたり)出身で、鋭い論理、卓抜した先見性をもって時代の流れに乗り、栄華を極めるも、最後は権力につぶされてしまう――。ひとりの人物を思い出してしまうのです。そう、ホリエモンですね。
まあ、江藤と違ってリンチで処刑されることもなかったわけで、まだまだ大きな影響力も持っている。こちらは再起に期待したいところですね。

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