paris.jpg新聞の特派員ていう人って、こういう生活をしているんだ、という感想を持ちました。どうもキザったらしい文章が最初は多くて、なにを言いたいんだかわからない内容なのですが、微笑ましい生活スケッチを読んでいくうちに、やがて文化の違いや、人の生活というものに、思いを巡らすようになっちゃいます。これは、読む人間をひきこんでいく文章力を持っているということでしょう。

この本には、3つの線があると思います。
作者の奥さんはベトナム人。連れ子の娘がいて、フランスへ留学してます。そして、下宿先の息子のピエールからプロポーズされています。相手の家族は大賛成。親として娘へ、結婚というのはどんなものか、説教にもならないこのつらさ。娘はもうメロメロ。
ちなみに、奥さんの前の旦那さんは、作者の親友です。なかなか一筋縄で語れないこの人間関係。 国際というものを、なまで体験しているというのは、すごいことですねえ。

で、もうひとつのお話の線は、作者の前の奥さんが、若くして死んでしまっていることです。お互い若 く、苦労をともにした青春時代への、作者の前妻に対する後悔と愛情とが、非常に切ない文章で綴られています。どうして、人間てのは失った後に大事なものに気づくのでしょうか。
「――前の妻の死後、私は、過去のすべてを石の塊にして心の隅に封じ込めてしまうことにより、人生の継続をはかった。そして、前の妻と生きた世界とはまったく異質の世界を転々とするうちに、いつか次の人生に足を踏み入れた。」

最後にもうひとつ、この作者はその後、いくつかの作品をまとめたあと、若くして亡くなっています。と ても優しさあふれる文章なのですが、全体に一種の死生観のようなものも漂っている気もするのです。それは、この作者がすぐに死んでしまうということを、知っていたからなのでしょうか。ちょっとうがった見方かなあ。

「やがて死ぬけしきは見えず蝉の声」
ふと思い出した、芭蕉の句です。

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