bignowhere.jpg
「NOWHERE」という言葉を聞いて、僕はビートルズの「NOWHERE MAN」という曲を思い浮かべました。なかなか哲学的な歌で、非常に心に残るフレーズです。
He is a little nowhere man.
Sitting in his nowhere land.
Making all his nowhere plants for nobody.
間違ってたら、すんません。「彼はどこにもいない男で、どこにもない島に住んでいて、誰のためにもならない、なにもない作物を育てている」とでも訳すのでしょうか。なんかマザーグースみたいですね。
この本では、ビッグ・ノーウェアは「大いなる虚無」と訳されていました。
ひとつの殺人事件を無理やりに担当する保安官補のダニーアップショーという人物が、大きな陰謀に巻き込まれていく過程を書いています。事件そのものは実に倒錯していて、動物の歯形で食いちぎられた死体の謎を追っていく展開です。同時に、アップショーは共産党をたたきつぶすための隠密作戦にも参加します。異常殺人と、共産党と、ふたつの渦の中心に投げ込まれ、大物マフィアや悪徳警官、ハリウッドのボスなども絡まりあい、それはもうこの作者の力技としか言えないストーリーです。やがて、アップショーはLAの暗黒で何が起こっていて、誰がなにをしようとしているのか、全体の輪郭をつかむところまでいくのですが、このあたりはちょっと言えません。そうか、やっぱりあんたが出てくるんだな、と思わずつぶやいてしまいます。
「4部作」といわれているLAシリーズですが、「LAコンフィデンシャル」を読んだあとで、こっちを読んだ方が、余韻が深くなるような気がします。「ブラックダリア」は、ちょっと置いておいて(めちゃおもしろいのですが、ストーリーとしては独立しています)、「LAコンフィデンシャル」→「ビッグノーウェア」→「ホワイトジャズ」という流れで読むのが、僕のお勧めです。
全体に、ストーリーは絶望感が漂っています。なんでここまで書き込むんだという気もします。ただ、この作者のすごいところは、すべてのことから逃げずに、真正面から取り組み、ついに書き切ったというところです。おそらく、大半の人はどれか一冊でも、読み切るのが困難だと思います。それでも、この作者と同じように逃げずに、この作品たちと真正面から向かい合ってみれば、他の作品では味わえない、深い感想を持つことになると思います。

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

Copyright(c) 2024 FARM Consulting Group All Rights Reserved.