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ほんとにもう、なんと言ったらいいのか、ものすごい小説です。前にも紹介した「ブラックダリア」「L.A.コンフィデンシャル」に続く、「暗黒のLA四部作」の完結編です。実は「ブラックダリア」は、あまり全体の筋とは関わらないのですが、もうひとつの「ビッグ・ノーウェア」とあわせて、四部作とされています。前の3作を読んでしまうと、もうすでに、すべての謎が解けるお膳立てをされているようなものです。相変わらず描写はハードです。心して読みましょう。
LAコンフィデンシャルの主人公だったエド・エクスリーが、この本では黒幕にまわります。なぜ彼は、あまり重要とは思われない、変質者の事件に執拗にこだわるのか。そして、どうにも救いようのない悪徳警官が主人公として、エクスリーの命令を受けて捜査を続け、大きな謎と陰謀に巻き込まれていきます。すべてを知っているエクスリー(つまり読者)、謎を解こうとあがき、破滅する主人公(これも読者)。本当の主人公は、ずっと語られることのなかった、華やかなロスアンゼルスの暗部なのでしょう。何が正義で、なにが悪なのか。そこに生きた人間の罪の重さは、どれくらい大きなものなのか。
多用されるスラッシュ記号、ボールドスタイルで描かれる世界は、麻薬、売春契約、大物、ハリウッド女優、偏執的殺人、権力、隠蔽、ギャング、愛憎、スキャンダル、B級映画、政治的かけひきに満ちています。それらすべてがつながり、それらすべてを操っている巨悪、そして翻弄される人間たちが見えてくるのです。破滅の淵で「事実を聞かせてくれ」ともがく主人公。狂った人間たち、喧騒に満ちた世界、そして最後に訪れる静けさ。音楽。ほんの少しの優しさ。
だいたい、この本の後ろについている帯書きがすごい。
「脈打つ暴力衝動、痙攣し暴走する妄執、絶望の淵で嗚咽する魂――ミステリ史に屹立する20世紀暗黒小説の金字塔。」だそうです。夢中で読みきった4作品でした。「ビッグ・ノーウェア」については、また後日。

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