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「しあわせの理由」グレッグ・イーガン

ハードSFの旗手であるグレッグ・イーガンの短編集その2です。
とにかくすごい作家で、発表する作品ほとんどが、なんらかの賞をとる。内容も、非常に科学の最先端できわどいところを取り上げています。
得意とするテーマは、量子力学とアイデンティティ。現代ハードSFの集大成というか、もはやSFのねたは出尽くしてしまっていて、この2点くらいしか真剣に、新しい視点を通して語られる物語もないのかも知れません。で、彼の作品はその新しい視点や、物語の構成方法が、ずばぬけておもしろいのです。
他人の脳みそを、自分のお腹で育てる「適切な愛」。量子論の世界を、緊迫したレスキュー劇として描く「闇の中へ」。記憶やアイデンティティは、データとして転送できるのか「移相夢」。ウィルスハザードをややコミカルに描いた「道徳的ウィルス学者」。などなど、素直に「すごいな」と思える短編が9つも。これはお得だ。
表題作である「しあわせの理由」では、これでもかというくらいに細かいプロットでお話が構成されています。脳内麻薬による幸福感。その脳内作用が、ガン細胞と一緒に破壊されたてしまったあとの、幸福感のない状態。さらに、その幸福感を補うために、ダミー神経を埋め込まれた主人公の葛藤。しあわせの基準をコントロールできるとしたら、人はどのようにこの世のできごとと折り合いをつけていけばいいのか。
ちなみに、短編集その1である「祈りの海」(テーマはアイデンティティ)と、長編「宇宙消失」(これは量子力学がテーマ)もお勧めです。

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