監査業務担当の牟田口です。
平成30年の確定申告では、不動産の動きが好調であることから、譲渡、贈与、住宅ローン控除など不動産関連の申告が多かったように思います。さて今回は、その確定申告であった疑問を研究してみます。
 
相続時精算課税制度」というのがあります。
これは、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる「贈与税の制度」です。生前贈与をやりやすくした制度で、相続ではなく、今のうちに財産移転したい場合に使える制度で、メリットとデメリットをきちんと把握して上手に使えば、おすすめできるものです。
 
【適用対象者】

1.贈与者は贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母又は祖父母
2.受贈者は贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人又は孫

 
【適用対象財産】

贈与財産の種類、贈与回数に制限はありませんが、限度額は2,500万です。

 
【必要書類】

1.受贈者や特定贈与者の戸籍謄本又は抄本
2.受贈者の戸籍の附票の写し
3.特定贈与者の住民票の写し
4.特定贈与者の戸籍の附票の写し

となっております。
そして、今回この相続時精算課税の申告書を作るときに同僚から「なぜこんなものが必要なのでしょうね?」となったのが、必要書類の1~4です。
 
これらの必要書類で税務署が確認したいことは以下の点だと思われます。

(1)受贈者の氏名、生年月日
(2)受贈者が特定贈与者の直系卑属である推定相続人又は孫であること。
(3)受贈者が20歳に達した時以後の住所又は居所
(受贈者の平成15年1月1日以後の住所又は居所でも可)
(4)特定贈与者の氏名、生年月日
(5)特定贈与者が60歳に達した時以後の住所又は居所
(特定贈与者の平成15年1月1日以後の住所又は居所でも可)

 
(1)と(4)は本人確認で、(2)はその関係が分かるものなので特に問題はありませんでした。でもその中で(3)と(5)がかなり???です。
 
第一の疑問が「もらった方の20歳の時から今までの住所と、上げた方の60歳の時から今までの住所」。
→その時の本人確認と関係だけあれば良いのではないかと思いませんか?
 
第二の疑問が「それぞれの平成15年1月1日以後の住所でもいいよ」。
→さらに、なぜ平成15年以後でも良いのかよくわかりませんでした。
 
当然、納税者に聞かれたら答えられないとまずいです。早速これを調べてみました。

第一の疑問は、もし、もらうほうが納税地をあちこちに変えたとします。そうすると税務署の管轄も変わります。その時にあちこちで相続時精算課税制度を使って贈与をすると、税務署は分からないのですね。また通常の贈与である暦年贈与で申告しても、やはり、管轄が違えばわからないのですね。そうして何回も贈与して、限度の2,500万以上の財産を移せるわけです。なるほどと思いました。
 
つまり、税務署が過去にさかのぼって、他に贈与がなかったか調べるためには、どの税務署か確認するため、過去の住所地を知る必要があったわけです。
 
そして、第二の疑問は、過去の住所地をさかのぼっていくことは、やったことがある人は分かると思いますが、かなりの手間がかかります。これが場合によっては、証明できないことあるようです。なので、平成15年以後と改正されたようです。
なるほどーと納得。法律はよく出来ているなと感心すると同時に、今回は勉強不足を反省でした。

  
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