zero_002.jpg戦争のお話です。零戦のお話です。零戦のパイロットたちのお話です。

「永遠の0」なんと美しいタイトルなのでしょう。戦争の話で美しいとは、いささか不謹慎と思われるかも知れません。しかし、この小説に描かれているのは、決して戦争を美化するような話ではありません。フィクションという形をとりながらも、そこには戦争の真実が描かれています。最前線で闘う男たちの生き様。銃後を守る家族への想い。大本営からの無謀な作戦。それによって奪われた多くの人々の命。祖国日本を守るために、誰もが命を投げ出す覚悟で闘っていた時代。そんな時代の中にあって、頑ななまでに「生」に執着する男がいました。宮部久蔵。帝国海軍航空隊所属の熟練パイロット。腕は一流だが、その言動ゆえに「臆病者」呼ばわりされることもありました。

このお話の語り部は、現代に生きる二人の姉弟。ジャーナリストの姉と、司法試験に何度も失敗し、生きる目標を見失ったニート寸前の弟。二人は、祖母の死をきっかけに、特攻で亡くなった実祖父・宮部久蔵の存在を知らされます。姉の手伝いではじめた実祖父の取材。臆病者呼ばわりされていた事。天才的パイロットとしての評価。かつての戦友たちから語られる宮部久蔵の人物像に一喜一憂しながらも、やがて、見えてくる真実。何ゆえ、彼が「生きる」ことに執着したのか。特攻を拒否していた男が、何故、自らの死を選択したのか。そして、衝撃のラスト・・・。ああ、これは、もう奇蹟としか言いようがありません。朝の通勤電車内で読みながら、あふれそうになる涙をこらえるという場面は何度もありました。しかし、この最後に語られる真実に、私は感動のあまり、手が震えてページがめくれませんでした。何とか読み切った私は、思わずつぶやきました。「ええ話や・・・」読後、私の心は、清々しさに満ち溢れ、爽快感で満たされていました。カタルシスを覚えるとは、まさにこのこと。宮部九蔵がどのような最後を遂げたのか、是非、その目で読んで確かめてほしい作品です。

現代と過去がリンクしながら進む物語は、決して過去のものではありません。そこには、現代社会に通じるものが多くあることに気づかされます。過去には学ぶべきことが沢山あるのです。奇しくも、今年の研修旅行の行き先は広島。祈念公園と大和ミュージアムを巡ります。原爆投下によって失われた多くの命。そして、「必死で戦っている沖縄に背を向けることはできない」という大義のためだけに、海上特攻を強いられた戦艦大和。慰安が目的の旅行ですが、そこだけは真摯な気持ちで、犠牲になった多くの命と向き合いたい。そして、「生きる」とは、「戦う」とは何か。現代に生きる自分なりに考えてみたいと思う。

  
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