いままで宮部みゆきの作品にみてきたように、ワープロを使うと、作品はつまらなくなっちゃうのでしょうか。
確かに、万年筆なんかを使って原稿用紙にがりがり書いているのと、ワープロでコピーを駆使して貼り付けていくのとでは、なんとなく作品の執念が違う気もします。
海外の作品は、やはりタイプライターが普及していたということで、昔から文字数の多い作品があります。日本の作品が500ページを超えるようになってきたのは、実はつい最近のことなんですね。

さて、おそらくワープロを駆使して書かれたこの作品、どうでしょうか。ページ数にして、じつに854ページ。普通の小説を3冊くらいくっつけたような、圧倒的なボリュームです。それでいて、一気に読ませてしまう力を持った作品で、もう夢中で読んでしまえます。宮部みゆきに読ませてやりたい。

ミステリアスな男と女と、ある殺人事件。やがて成長していく2人のそれぞれの周囲で起こる、殺人、暴力、謎。
しかし、この2人には実体がない。いつでも傍観者であり、素顔の見えない、影のような人間。「ミステリーの概念を打ち砕く、叙事詩的傑作長編」と謳われているように、物語の厚みとスケールが圧倒的です。ひとことで言ってみると、「すべてがつながっていく」ということで、無理な設定がまったくない。過去から未来、未来から過去へと、物語は必然性をかたくなに守っています。背景として描かれている大阪の街は、昭和の終わりから平成の今まで、バブルの頃。いわゆる団塊ジュニアとして育った現30代の、成長、夢、ノスタルジーを、駆け抜けるようにして書いているところは、まさに叙事詩ですね。これほど小説の世界に没頭できるような作品にであえることは、本当にしあわせなことです。

ひとつだけわからないのが、解説者の馳星周。
この人って、誰?「ノワール」な小説を書く人みたいだけど、のわーるって何?エロ?グロ?
「ノワールという言葉は、日本では誤解されている(日本に限ったことではないのだが)」とか言ってますが、それって、世界中でわかられてないってことだよね。ジェイムス・エルロイの作品も解説してたけど、途中で読むのやめちゃった。解説を最後まで読めないというのは、なかなか大変な体験だけど、今回もそうでした。ちなみに、解説は6ページしかないです。

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