「ゴールドラッシュ」て聞くと、やっぱり矢沢のえいちゃんだよね。
まあ、そんなことは、おいといて。

例の神戸の少年殺人があってから、少年犯罪というより、現代の少年たちの抱える問題、世界観、大人たちの無力さ、教育の矛盾が、一気に社会に認知されてきました。それでも、別に当事者でなければ痛くも痒くもないものだし、むしろおもしろくてしょうがない、使い捨ての報道の材料になる、そんな世の中です。
ショッキングな事件でも、時間が経てば忘れてしまう。それでも時間をかけて、現代の少年期というものの本質を掘り下げた作品です。

人生はゲームだと割り切る少年。レイプ、麻薬、ありあまる金、不登校、天使的な病気の兄、精神を病んだ母、そして殺人。主人公の少年の住む街には現実感がなく、まわりに集まってくる同年代たちも、頭のいい少年には動物のように見えています。
それでも親しい老人が死んだときに、少年は激昂し、そのナイーブさと脆さも見ることができます。
「少年は怒ることによって謝罪を求めているのではなく、ただ怒りに身を任せているだけだった。震源は少年自身の内部にあるのに、それを抑える力は少年自身にはなかった。」
少年を受け止めてくれる力強い存在は、この世の中には存在しません。それが人にとって、どれだけ不幸なことか。
いびつな幻覚の描写がちょっとくどい気もしますが、全体に迫力のある文章でした。この作者の、他の作品も読んでみようと思いました。

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