この作品が書かれた(初版)のは、1984年ですから、僕は高校生で、夢中になってSF小説を読み漁っていた時期です。様々な作家がいますが、この作者の小説はその頃から全部読んでいます。まあ、暗いのね、基本的に。今回、続編「グットラック」が文庫で出たのをきっかけに読み直してみました。

お話のテーマは、異星人との戦い。人工知能を持った戦闘機に乗って、迫りくるエイリアンをやっつけるのだあ!でも、ただのスペースオペラではありません。人間と機械(コンピュータ)の、息詰まるアイデンティティの化かしあい。まず、相手である異星人の正体がまったくわからない。作品を読み 終えても、わからないまま。
最前線に赴き、戦闘の一部始終を電子データとして記録して帰ってくるという「戦術戦闘機」の戦隊。 この高性能な戦闘機は、戦闘の行われているはるか上空を飛びながら、味方機の戦いを「高解像度で」記録します。任務はその記録を持ち帰ってくること。仲間が敵にやられようが、なんとか助けられそうでも、見殺しにして帰ってくること。誰が名づけたか、「ブーメラン戦隊」。ちょっとかっこ悪い。

そこでのトップ戦闘機に乗るのが主人公の零。暗い過去をひきずっているらしくて、孤独な人間なのだ。誰のことも信用しない。信用できるのは、そう、愛機の雪風だけだ。この主人公と、異星人「ジャム」との戦いをとおして、何人かの登場人物が物語をおりなしていきます。自分たちは、いったい何と 戦っているのだろうか。そもそも、ジャムの地球侵略の目的は何なのか。ジャムが攻撃しているのは、地球にいる人間ではなく、コンピュータシステムではないのか。自分たちは、ジャムの敵ですらないのではないか。
「エンジン・スタート。ジェット・フュエル・スタータ作動。エンジン-クランク。右から。ロータが回り出す。回転計指針がはねあがる。オイル圧上昇。フライト圧上昇。右-スロットル-オン、アイドルへ。自 動点火システム作動。燃料流量、急速増加。四〇パーセントRPMでスタータが自動カットオフ。左エンジン始動・・・」
物語の全編が、非常に硬質な表現で語られています。機械と人間との、息詰まる関係。機械が主役になった世界に、否応なくとりこまれて人間たち。
「戦闘」「妖精」「雪風」このみっつの言葉には、ファンタジーと硬質さが入り混じっています。なんとも 説明の難しいタイトルです。SFファンの間では、この本は「完璧な小説」とまで評価されているそうです。

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