粉飾決算

監査一部門の清岡です。

 

前回の続きです。

粉飾決算に巻き込まれないために、知っておくと便利な指標がいくつかあります。

実際に事例を使ってみていきましょう。
 

 
 

売掛債権回転期間

 

売上の架空計上を、売掛債権回転期間から判定してみましょう。

 

売掛債権回転期間とは、売掛債権が月商の何ヶ月分かを示す数値です。

売上から回収されるまで、何ヶ月かかるのかを表しています。

 


算式  売掛債権÷(年商÷12ヶ月)=売掛債権回転期間
 

 

この期間が短ければ短いほど、会社にとっては資金繰りが楽になります。

現金商売の場合には、商品を販売後すぐに入金となるので理想的ですね。

 

例)A社の売掛金が100万円で、年商が1,200万円の場合

 
回転期間  100万円÷(1,200万円÷12ヶ月)=1ヶ月

 

これが、前回に記載した架空売上の計上を行なえば、回収されない売掛金が残高として残ります。

 

例)A社が100万円の架空計上(粉飾)をおこなった場合

  売掛金が200万円、年商が1,300万円となります。

回転期間  200万円÷(1,300万円÷12ヶ月)=1.84ヶ月

 
 

業種別-財務営業比率0001

上記の数値を「同業他社の平均値」「同じ会社の数年間の数値」「回収条件(回収サイト)」と比較し、判定します。

ただし、自社が粉飾をおこなわず回転期間が1.84倍になっている場合には、原因の解明が必要です。

例えば、回収サイトの引き伸ばしがあったのか、未回収の債権が残っていないか、それとも、たまたま期末に大きな取引があった事による増加なのか。原因の解明と対応が必要です。

 
 
 

買掛債務回転期間

 

また買掛債務回転期間と一緒に判断する事により、資金繰りの判断指標としても活用できます。

買掛債務回転期間とは、商品を仕入れてから代金を支払うまでの期間を表しています。

 


算式  買掛債務÷(年間仕入高÷12ヶ月)=買掛債務回転期間
 

 

この期間は、長ければ長いほど資金繰りが楽になります。

 

例えば、売掛債権回転期間が2ヶ月で、買掛債務回転期間が1ヶ月の場合、

債権の回収の前に、債務の支払期日が先に来てしまいます。

これでは、資金繰りが厳しいですね。

 

改善策としては、「回収サイトと支払サイトの見直し」と「仕入高の圧縮」が必要です。

回収サイトを短縮し、支払サイトは先延ばしを検討。

理想は、回収期間のほうが、支払期間よりも短いことです。

 
 
 

棚卸資産回転期間

 

次に、棚卸資産回転期間から棚卸資産の水増しによる粉飾をみていきましょう。

 

棚卸資産回転期間とは、商品を仕入れてからどのくらいの期間(月数)で販売できているかを見る指標です。期間が長いほど、仕入から販売するまでの期間が長いことを表しています。

 


算式  棚卸資産÷(売上原価÷12ヶ月)=棚卸資産回転期間
 

     (参考)売上原価÷売上高=原価率

 

例)B社の売上 1,000万円、売上原価 600万円、棚卸資産 100万円の場合

回転期間 ⇒ 100万円 ÷(600万円÷12ヶ月)= 2ヶ月

 原 価 率 ⇒ 600万円 ÷ 1,000万円 = 60%     


これに、100万円の棚卸資産を水増しすると、

売上 1,000万円、売上原価 500万円、棚卸資産 200万円となります。
 

回転期間と原価率はどう変わるのか・・・

 

回転期間 ⇒ 200万円 ÷(500万円÷12ヶ月)= 約4.8ヶ月

 原 価 率  ⇒ 500万円 ÷ 1,000万円 = 50%      

 

これも、通年との比較により、過大な在庫や原価率の大きな変動を確認することができます。

 
 

これらの指標は、何も粉飾の確認のためだけに利用する訳ではありません。

自社の現在の状況を把握し、それぞれの指数を比較する事により、問題点の把握と今後の改善に活用することができます。

 

棚卸資産については、過去の記事『自社の在庫は適正ですか?』も併せてご覧下さい。

 

なお文中の表は、総務省統計局の「6-13 業種別法人企業の財務営業比率」から一部抜粋しました。

  
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