監査業務一部門の牟田口です。
国税庁より今年も平成28事務年度における相続税の調査の状況が公表されました。これに合わせて「*1 平成27年分の相続税の申告状況について」を使って、相続税の申告状況について確認してみましょう。

*1 平成28年分がまだ公表されていませんので前年の公表値による

 

1.相続税の申告の提出に係る被相続人数

平成26年分 56,239(死亡者に対する課税割合4.4%)
平成27年分 103,043(死亡者に対する課税割合8.0%)

相続税の件数は、平成26年度までは、ほぼ同じぐらいの人数で推移していました。しかし平成27年分で課税割合が1.81倍と2倍近く増えています。これは予想どおりで、基礎控除が平成27年に減った影響です。弊社でも相談件数は確実に増えています。平成28年分はまだ公表されていませんが、恐らく平成27年度と同じくらいではないでしょうか。


 

2.被相続人1人あたり課税価格

平成26年分 20,407万円
平成27年分 14,126万円

課税価格は、基礎控除が減った影響で、相続財産が少ない方の申告が増えたのでしょう。
1人当りは減っています。課税価格も今後は平成27年度と同じぐらいで推移するでしょう。

 

3.相続財産の金額の推移

平成25年頃から、相続財産が増えてい行っているこが分かります。アベノミクスのおかげで、株価上昇による金融財産の増加が影響しているのが分かります。不動産も都市部では上がっているのでこれも全体を押し上げているようです。


 

4.実地調査の件数

平成26事務年度 12,406件
平成27事務年度 11,935件
平成28事務年度 12,116件

実地調査の件数はほぼおなじくらいで推移しています。
申告件数が増えても調査は増えていないのが現状です。

 

5.申告漏れ等の非違件数

平成26事務年度10,151件 (非違割合は81.8%)
平成27事務年度9,761件 (非違割合は81.8%)
平成28事務年度9,930件 (非違割合は82.0%)

*非違割合 申告漏れ等の非違件数/実地調査の件数

調査があった内、申告漏れなどがあった割合もほぼ同じ割合で推移しています。そして、修正なしで税務調査が終わるのは2割弱しかないことになり、ほとんどが修正の対象になっているのが現状です。事前にその相続の全体をほぼ調べて調査になるとはいえ、本当に多いですね。

 
これらの数字をみると、相続税の件数は増えていますが、税務調査は増えていません。調査の対象になるのは、もしかしたら、相続財産が大きいものが対象になっているせいかもしれません。また、その他の資料で、海外資産に重点が置かれ調査が実施されているようです。海外に持って行って課税逃れをしようとしても、今後は海外当局との情報交換が強化されているので、無駄な抵抗に終わるようです。とにかく相続税は、きちんとした申告で、きちんとした節税対策をすることが大事になってきます。ごまかすのは絶対にいけません。
 
平成27年分の相続税の申告状況について
https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2016/sozoku_shinkoku/index.htm

平成28事務年度における相続税の調査の状況について
https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2017/sozoku_chosa/index.htm

  
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