みなさまこんにちは、社員税理士の光島です。
 
さて、今回は生命保険契約に関するお話です。世の中には、法人に対す

る いわゆる「節税型の生命保険契約」というものが結構あります。

 

退職金の支払い等に備えるために、解約返戻金の時期を合わすことで、

資金繰りをスムーズにする効果があり、その結果として課税が少し繰り

延べられる効果があるものや、解約返戻金の返戻率が急激に変化する前

に、法人から個人に名義の変更をすることで、所得を法人から個人へ移

転させる効果のあるものなど、様々な保険商品が日々生まれているようです。

 

多くの場合、生命保険会社はこのような商品を開発する段階で課税当局に照会をかけて、どのような処理

が正しいのかを確認して保険を販売しています。通常は、この処理の方法にのっとって税務処理をしてい

れば問題ありません。

 

しかし、本来の生命保険の役割を超えて、会社の行き過ぎた節税のためのスキームとして流行してしまう

ケースもあります。

 

さて、課税当局としてはこのような状況に対して、どのような対応をしてくるのでしょうか?

基本は、情報収集から始めます。情報収集にはいろいろな方法があるのでしょうけれど、一般的には税務

調査や資料せんの収集「支払調書」が考えられます。
 
支払調書とは、ある一定の支払いがあった際に、「その支払者」が、その支払いに関する「各種の情報」

を税務当局に「提供」するために提出する書類です。
 

○ 誰(氏名や住所)に支払ったのか?
○ いくら払ったのか?
○ いつ払ったのか?
○ 支払いに対する源泉所得税はいくらだったのか?

等々

 
様々な情報が記載できるように、支払調書には各種の項目がレイアウトされています。

この項目を増やす(当然、法律等の改正が必要です)ことによって、情報がより充実します。

実は、この項目が増える場合には、課税当局の注目度が上昇している可能性があると考えられるのです。

 

平成27年度税制改正で、支払調書の一部についての改正がありました。

今回注目するのは、第86条 生命保険金等の支払調書 の改正です。
 

イ 当該契約者の変更(当該契約に係る契約者の変更を2回以上行った場合には、最後の契約者の変

更)前の契約者の氏名又は名称及び住所若しくは居所又は本店若しくは主たる事務所の所在地

ロ 当該契約に係る現契約者が払い込んだ保険料又は掛金の額

ハ 当該契約に係る契約者の変更の回数

 
これらの項目が増えたのです。どういうことかといいますと、先ほども少し触れたのですが、

法人から個人へ生命保険契約を解約し、その保険契約を解約して解約返戻金を受け取った場合、

「個人への売却価格」と「法人での保険料の支出額」とに差がある場合、法人側に損失が生じます。

 

当然、個人で買い取った生命保険を解約して返戻金を受け取った場合には、買取金額+支払保険料と、

解約返戻金の差額に所得税が課税されるので、あまり損得ないように見えますが、実は、個人で受け

取る場合は、課税所得が一時所得となるので、次の式のように計算されるのです。

 

[{解約返戻金-(買取金額+支払保険料)}-50万円]÷2

 → 課税所得になります。

 

個人で買い取った場合に、”-50万円]÷2” がお得になるケースが出てきます。

(個人の所得によるので、すべてのケースで有利とは言えませんが・・・)

 

今回の改正は、上記の算式の「買取金額」を「法人の支払保険料の総額(既払保険料として表示される

ため)」と間違うケースが多いので、そのことに対応したと思われますが、

”-50万円]÷2” で得したのは誰なのだろう という課税当局の関心事項の表れと見ることができます。

 

ちなみにこの改正は、平成30年1月1日以降に法人から個人へ名義変更を行った場合に適用されます。

生命保険の場合には、効果が出るまでに期間が長いものが多く、その間に税制が動く場合もあります。

このあたりは、しっかりと専門家と相談しながら十分な対応をしたいものですね!

では、また!!

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