監査担当の内藤です。
本日は、領収書や請求書の保存について事例を交えて解説していこうと思います。
お客様からの質問で「請求書等の書類ってどれくらい保存しておかないといけないの?置き場所がなくなってきて早く捨てたいんだけど…」といったご質問をいただくことがございます。
これに対し私は、「請求書等の書類の保存期間は税法によって異なるものもありますが基本的に7年間、決算書などの書類は会社法で10年間保存するように規定しています。」とお答えしています。

 

例えば消費税法では、消費税法施行令50条に「帳簿及び請求書等を整理し、当該帳簿についてはその閉鎖の日の属する課税期間の末日の翌日、当該請求書等についてはその受領した日の属する課税期間の末日の翌日から二月(中略)を経過した日から七年間、これを納税地又はその取引に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地(中略)に保存しなければならない。」と規定しています。

 

仕入先の請求書も7年となると、量も膨大となり保存も大変だとは思いますが、次の事例をお読みになって書類保存の重要性をご理解いただけたらと思います。

 

<平成15年6月26日の国税不服審判所の裁決事例>
事案を要約すると税務調査を受けた事業者が帳簿及び請求書等を保存していなかったが、帳簿及び請求書等の保存がなくても消費税の仕入税額控除が可能かどうかを争った事案です。

 

事業者側の主張:

請求書がなくても、仕入先の売上帳のコピーや通帳等から金額を把握できるためこれらによって証明される仕入税額を控除しないことは租税正義にかなうものではない。

 

税務署側の主張:

消費税法30条7項「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(中略)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。」という条文を根拠として、仕入税額控除の要件である請求書等が保存されていないから仕入税額控除はできない。

 

仕入税額控除とは:消費税は原則的に売上で預かった消費税から、仕入先等に支払った消費税を差し引いてその余りの部分を国に納めるというものです。(免税事業者や簡易課税を選択している場合は除きます。)

(例)
消費税率10%で税抜売上2,000万円、税抜仕入1,500万円だった場合
売上に対して2,000万円×10%=200万円の消費税を得意先から預かる。
仕入に対し1,500万円×10%=150万円の消費税を仕入先に支払う。

この場合、納める消費税は預かった消費税200万円から支払った消費税150万円を差し引いた残りの50万円を国に納めることとなります。この差し引くことができる150万円の消費税部分を仕入税額控除といいます。

 

審判所の判断:

「事業者が当該課税期間の仕入税額控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合には、当該保存がない仕入税額については仕入税額控除を適用しないこととされているところ、消費税法第30条第7項の規定は、仕入税額の証明手段を法定の帳簿及び請求書等に限定していると解するのが相当であるから、他の証拠資料によって課税仕入れに係る支払対価の額を合理的に推認できる場合であっても、仕入税額を控除することは認められない」とし税務署側の主張を全面的に認め、事業者の主張を退けた。

 

この事例通りとなりますと、請求書等を保存していない場合、上記の私の例では、本来納める税金は50万円のところ、仕入先等に支払った消費税150万円は認められないこととなり売上で預かった消費税200万円全額が納税額となってしまいます。

 

請求書等を保存していないだけで仕入れ先等に支払った消費税の仕入税額控除が認められない場合がございますので、請求書等の保存はしっかりと行っていきましょう。

 

  
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