監査業務担当の内藤です。
本日はインボイス開始に向けての現在免税事業者である方の今後の心構えについて解説していこうと思います。
令和5年10月よりインボイスが始まるにあたり、免税事業者の方が、課税事業者を選択することについて非常にややこしい状況となりつつあります。
 
先日、日本経済新聞で、「課税売上高が1,000万円以下の小規模事業者は今まで消費税が免除されていましたが、小規模事業者が課税事業者に転換した場合の納付額を、受け取った消費税額の2割に抑える検討に入った。3年間の時限措置とする方向で調整し、2023年度与党税制改正大綱に盛り込む予定」との内容の記事(日本経済新聞令和4年11月21日付)がでました。インボイス開始にあたって、漫画家・俳優等の業界の方から大きな反発があったことに配慮する制度だと思われます。
 
そもそも現行の課税制度では納税課税事業者は、消費税の計算をする場合に、原則課税制度簡易課税制度の2つの制度を選択することができます。
 

原則課税制度

売上等により預かった消費税から仕入や費用により支払った消費税を控除して納付税額を計算する原則的な計算方法をいいます。下の例で見てみましょう。(すべて税率10%とします。)

売上: 800万円

消費税のかかる費用(仕入・店舗家賃・水道光熱費等): 500万円

預かった消費税は80万円、支払った消費税は50万円ですので、

納付税額は、80万円 - 50万円 = 30万円となります。

 

簡易課税制度

2年前の売上が5,000万円以下の事業者が選択できる制度で、事業の種類の区分(事業区分)に応じて定められたみなし仕入率を乗じて算出した金額を仕入れに係る消費税額として、売上げに係る消費税額から控除する計算方法をいいます。
 

事業区分 みなし仕入率
第1種事業(卸売業) 90%
第2種事業(小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業に限る)) 80%
第3種事業(農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業および水道業) 70%
第4種事業(第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業および第6種事業以外の事業) 60%
第5種事業(運輸通信業、金融業および保険業、サービス業、(飲食店業に該当するものを除く)) 50%
第6種事業(不動産業) 40%

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm

出典 国税庁HP

 
つまり事業の種類に応じて、控除する消費税額が変化することとなります。また、預かった消費税にみなし仕入れ率を乗じるため、実際に支払った費用等は考慮しません

例えば、飲食業は第4種(テイクアウトは第3種)に該当し、みなし仕入率が60%ですので、預かった消費税に60%を乗じた金額を預かった消費税から控除して納付税額を求めます。

売上が800万円だとすると、預かった消費税は80万円ですので納付する消費税額は、
80万円 -(80万円×60%)= 32万円となります。

 
これら2つの制度を比較し、どちらの方が納税額が低くなるかを検討することなるわけです。
ここで冒頭の記事に戻りますが、この新しく検討されることとなった制度(以下、特例制度という)では、売上等で預かった消費税の2割を納税額として良いという制度ですから簡易課税制度とよく似ていますが、どの事業でも預かった消費税の2割の納税額で良いというところが異なっています。
 
そのため、この特例制度が導入されることとなった場合、原則課税制度、簡易課税制度、特例制度の3つを比較検討することとなります。2つの制度の検討でも苦慮することが多いのに、3つとなると相当厳しいものになるのではないでしょうか。税理士泣かせな制度となりそうです、、、
 
今のところ、この特例制度の詳しい内容が出ていないので、この制度を選択した場合、何年間は他の制度を選択できない等の「縛り」があるかどうかはわかりせんが、これから課税事業者を選択される方にとっては非常に重要な制度となっておりますので、注視する必要がありそうです。詳しい内容が明らかになれば、また当コラムで紹介しようと思います。

  
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