監査業務担当の清岡です。
税理士事務所にとって、個人の確定申告業務が終わりようやく通常の業務に戻りつつあります。

今回は、個人の確定申告書(決算)の作成にあたり気を付けた方がいい事例をいくつか記載します。特に事業をされている個人事業主の方に読んでいただきたい内容です。以前に書いた【「元入金」について考える】にも通ずる内容です。
 
【1.個人事業主の給与】
個人事業主の方は、法人のように社長(事業主)としての給与や賞与を会社から貰うわけではありません。会社員のように「給与」という概念はありません。では個人事業主の給与とは何でしょうか?
それは事業の所得(収入から経費等を差引いた残り)となり、基本的には使い方に制約があるわけではありません。すなわち事業の財布と個人の財布に区分がないのです。

そこで、事業主の生活費などのお金を事業用の現預金等から持っていく際には、「事業主貸」の勘定科目を使用します。

例)事業主貸/現金(普通預金)・・・事業用の貸借対照表の現金(普通預金)が減少します

 
ここで注意が必要です。
生活に必要なお金を必要な時に移動させていると、事業用の資金(現預金)が減少してしまい、資金繰りの算出時にも不明確となります。

(対策)給与と同じように毎月固定の金額を固定の日に移動させることで、資金繰りが明確となります。

 
【2.簿外資産の発生】
事業用の資金(現預金)を、簿外で積立金や定期預金にされている場合もあります。これも、事業用の貸借対照表には表示されないため、実際に事業用としても資金(現預金)が明確になりません。

事業主貸/現金(普通預金)・・・簿外資産
資金が必要時に ⇒ 現金(普通預金)/事業主借・・・事業用資金が不明確

(対策)もしも事業用と考えての積立金や定期預金であれば、貸借対照表に表示する方がいいでしょう。
定期預金/現金(普通預金)・・・貸借対照表に表示(事業用資金が明確)

 
【3.事業用経費と個人的な支出の混在】
次によく見受けられる事例です。
(1) 1枚のクレジットカードで事業用の経費と個人分が混在

(対策)事業用のクレジットカードを作成し、事業用の口座から引落とする。
個人分のクレジットカードは事業用の以外の口座から引落とする。

(2) 1つの通帳内に事業用の経費と個人的な支出が混在

(対策)上記と同じように、事業用と個人用の口座を区分する。

(3) 不用意に普通預金の口座間で資金移動
入金口座と支払口座を区分されている場合には仕方ないのですが、理由なく資金移動をされている場合は止めましょう。
 
じつは、このような事例の多くは事業を開始されて間もない頃に多く見受けられます。それは、とりあえず今ある口座やクレジットカードを利用して事業をされるからです。

現在でも区分なくそのままにされている事業主の方は、いい機会ですので整理(不要なカード、不要な口座の洗出し)の意味でも区分されることをお勧めします。区分することで、事業の資金繰りや、個人の生活費に実際幾らかかっているか等が明確となります。

  
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