監査業務担当の内藤です。
本日は、国税不服審判所の裁決(令和2年2月19日裁決、一部抜粋)を参考に重加算税について確認していこうと思います。
 
まず、重加算税については国税通則法68条において、「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額・・・に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。」と規定しています。
 
重加算税が課されるかどうかの条文にあるように、うっかりミスではなく、故意に隠蔽・仮装をしたかどうかが重要なポイントとなります。
ここに着目して、事案を確認していきましょう。
 

【事案の概要】

スポーツインストラクターであるSさんは、H23~H29年分の所得税及び消費税について所轄税務署より調査を受け、同税務署長が所得税及び消費税に対する重加算税の賦課決定処分を行ったことに対し、Sさんが重加算税の賦課決定要件は満たしていない等主張し、重加算税の取り消しを求めた事案である。

 

《国税不服審判所が確認した事実》

・Sさんは幼稚園等から委託を受け、講師として幼児等に体操等の指導を行っていた。

・体操等の教室を主催し、会員である幼児等に対する指導を自ら又は外部委託して行っていた。

・体操教室の月謝収入は前月末までに現金回収し、その都度「月謝出納帳」と題するルーズリーフノートに日々の人数・集金額を記載していた。(H26.3までは現金回収、H26.4からは振替)

・H24.6~H29.12までに指導した会員数はほぼ毎月200名を超えていた。

・Sさんの月謝収入はほぼ毎月100万円を超えていた。

・体操教室以外の収入として入会金、年会費、合宿等の行事参加費、昇級審査料等及びユニフォーム等の物販に係る収入があった。

・SさんはH23~H29年度の7年間、真実の金額の24.3%~48.0%に収入金額を調整し、各年度の収入金額が1,000万円以下の金額になるように減額し申告を行っていた。

・調査時において「月謝出納帳」などの帳面を秘密にし、調査の中で矛盾点を指摘されると虚偽の書面を作成し、調査官に提示した。

 

《Sさんの主張》

・本件事業の収入金額等に誤りがあったものの、勘違いや集計誤りを原因とするものにすぎない。

・収入金額等を調整して故意に多額の所得を脱漏したことはない。

・本件調査の際に、本件調査担当職員の求めに反して本件事業に係る帳簿書類を隠したこともない。

・原処分は、このような請求人に対して、個別具体的な検討もせずに請求人が高額、悪質な脱税者であるかのように行われたものである。したがって、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たさない。

 

【不服審判所の判断】
請求人(Sさん)は、本件事業に係る総収入金額が1,000万円を超えること、及び真実の総収入金額が容易に判明する本件月謝出納帳又は本件通帳2の存在を秘したことや、真実の金額とは異なる本件所得税等各確定申告の総収入金額に合致する内容虚偽の本件当初提示書類を事後的に作成し、本件調査担当職員に提示したこと等、単に真実の所得金額よりも少ない所得金額を記載した確定申告書であることを認識しながらこれを提出したにとどまらず、請求人が、真実の所得の調査解明に困難を伴う状況を作出し、真実の所得金額を隠蔽しようという確定的な意図の下に、本件調査に際しても、虚偽の帳簿書類を複数回作成するといった隠蔽のための具体的な工作を行い、真実の所得金額を隠蔽する態度、行動をできる限り貫こうとしたと評価せざるを得ないものである。
 
また、消費税についても課税売上高が1,000万円を超えれば消費税等の納税義務が生じること、及び本件事業に係る消費税等について当該納税義務があることを認識していたからこそ、本件事業に係る総収入金額が1,000万円を超えることの発覚を避けるために、一連の行為をしたと認めるのが合理的である。
 
そうすると、請求人が、当初から課税標準等及び税額を申告しない確定的な意図を有し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき法定申告期限までに申告をしなかったような場合に該当するというべきであるから、本件各課税期間の消費税等について、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすということができる。

 
◆まとめ◆
いかがでしたでしょうか。この事案においてSさんは7年間分の所得税と消費税の修正を行い本来払うべき税額を納税すると共に本来支払うべき税額の35%相当分の重加算税を支払うこととなりました。重加算税はその名のごとく重い罰金ですので、このような重い罰金を支払わなくて良いように適正な処理を行いたいものですね。
 
なお、本事案のSさんの場合は明らかな仮装隠蔽の意思が読み取れますが、仮装隠蔽の意思がなく重加算税対象でないのに重加算税を課されるということもありえます。
そのようなことにならないよう、調査時にはしっかりと根拠をもって主張していきましょう。

  
コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください


Copyright(c) 2024 FARM Consulting Group All Rights Reserved.