監査業務担当の内藤です。
令和5年10月1日よりインボイス制度が開始いたしました。今後、実務において様々な問題点が出てくると思います。本日はインボイス制度開始にあたって、迷いそうな事例をいくつかピックアップしてお伝えしていこうと思います。
 

(1)源泉所得税の計算

外交員報酬や講演料を支払う場合に源泉徴収をされていることと思います。
インボイス制度開始後に適格請求書発行事業者以外の事業者が発行する請求書等において、消費税抜の価格に対する源泉所得税の計算をすべきか、消費税込の価格に対する源泉所得税の計算をすべきかという疑問が出てくるかと思います。

<例>
外交員報酬10万円、消費税相当額1万円を支払う場合
外交員報酬10万円に10.21%を乗じて計算するか、
消費税相当額を含んだ11万円に10.21%を乗じて計算するかどちらか?

 
現行の取り扱いでは、原則として、消費税等の額を含めた金額が源泉徴収の対象となります。
ただし、報酬・料金等の支払を受ける者からの『請求書等』において、報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、その報酬・料金等の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えないとされています。
 
これがインボイス制度開始後にどうなるかということですが、現行の取り扱いと変更がありません。『請求書等』とは、報酬・料金等の支払を受ける者が発行する請求書や納品書等であればよく、必ずしも適格請求書(インボイス)である必要がないとの理由からです。
 

(2)締め日が末日以外の請求書(請求書が令和5年10月1日をまたぐ場合)

例えば、請求書が25日締めの場合、令和5年10月25日に締めた請求書には9月26日~9月30日の間の取引と10月1日~10月25日の取引が混在することになります。
令和5年10月1日より適格請求書発行事業者となった場合には、9月26日~9月30日の間の取引に係るものは適格請求書でなくても良いですが、10月1日~10月25日の取引に係るものは適格請求書でなくてはなりません。
そのため、登録日前の取引に係るものと登録後の取引に係るものを区分する必要があります。請求書には9月分と10月分を明確に区分して記載するようにしましょう。
 

(3)既に契約している賃貸契約

<例>
令和5年10月1日以前より事務所を賃借しており、毎月口座から賃借料が
引き落としされているのみで請求書等が送られてきていない。

 
令和5年10月1日以降は原則として仕入税額控除を受けるためには、適格請求書の保存が必要なため、貸手側に請求書を発行してもらう必要があります。適格請求書は、毎月発行してもらう必要はなく、一定期間の取引をまとめて交付することも可能なため1年分をまとめて請求してもらうことも可能です。
 
また、適格請求書に必要な記載事項は一つの書類だけで全ての記載事項が記載してある必要はありませんので、複数の書類で記載事項を満たすことで、仕入税額控除が可能です。例えば契約書に登録事業者番号の記載のみが無く、他の記載事項は記載がある場合には、登録事業者番号の通知書を受けて契約書と共に保存すれば問題ありません。
 
以上、迷いそうな事例を挙げて説明しました。下記の国税庁のページも参考にしてください。これ以外にもまだまだ迷うことが出てくると思います。その際は弊社、または弊社担当者へご確認をお願い致します。
 
参考
国税庁 インボイス制度開始後の報酬等に対する源泉徴収
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/gensen/111209/01.htm
国税庁 インボイス制度に関するQ&A(問75 問93)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf#page=116

  
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