監査担当の内藤です。
コロナも落ち着き飲食での接待が増えてきておりますが、本日は「代表者1人での飲食を交際費として経費計上していたが、税務調査で否認され、さらに重加算税まで課された事例(高等裁判所令和3年1月28日判決)」をご紹介いたします。
 

《事実の概要》

①甲はパチンコ店A社、派遣業B社、飲食店C社を経営する各法人の代表者又は実質的経営者である。

②約4年間でA社につき3285万2560円、B社につき2199万2250円、C社につき1122万6300円、3社を合計して6607万1110円(合計利用回数372回余)を各法人の業務の交際費等として費用に計上していた。

③甲にはひいきにしていたホステスがおり、本件ホステスが移籍すると甲も順次これら移籍先のクラブを利用し、甲は本件各クラブを利用するに当たり、本件ホステスと頻繁に同伴出勤やアフターをしており、また、その際に高級な飲食店で同人と飲食を共にすることもしばしばあった。

④裁判所は、「本件各クラブにおいて接待等を行うことが業務上必要である合理的な説明はなく、ほとんどの場合1人で利用していたことから(クラブ側への調査でも確認)、甲の個人的な飲食代金であった」と認定した。その上で、本件各支出額を貸付金ではなく交際費として仮装して所得金額の計算上損金の額に算入したことは、事実を仮装したとして税務署が課した重加算税の課税処分を認容した。

 
事実の概要を見ても交際費としては厳しそうだなと思われるでしょうが、甲がどのように反論したかも重要なので甲の主張も記載しておきます。
 

《甲の主張》

①各クラブを1人で利用した際の代金は本件各支出額に含まれていない。各クラブを利用した際の同行者は、出身高校の関係者、サッカー仲間、JC(青年会議所)の関係者、取引先ないし同業者等であり、その目的は人脈を広げるためであった。

②本件各クラブを利用する都度ウイスキーやブランデーのボトルを注文していたのであり、その全てを甲1人で摂取したとは認め難いから、複数人で本件各クラブを利用していたものである。

③クラブの売上集計表(本件各集計表)に甲が利用した際の来店者数が1名と記載されているのは、クラブ側が上客である甲に対して人数毎に必要となる基本料金(セット料金)をサービスする目的で、来店者数を実際とは異なる1名と記載したものにすぎない。

④質問応答記録書に、本件各支出額が本件各クラブを1人で利用した際の費用である旨の回答が録取されているのは、本件税務調査によって精神的に疲れ果てていた甲が、判断能力が低下した状態で署名したものであるから、任意性を欠くものとして自白法則(憲法38条2項)により証拠から排除されるべきものであり、また、その信用性も当然に否定されるべきものである。

 
なかなか苦しい主張になっております。実際、裁判所からは「接待等を行うことが業務上必要である合理的な説明はない」と一蹴されております。
 
《私見》
本件の内容を見てみると法人の交際費としては厳しいだろうと大多数の方が思われるのではないでしょうか。交際費として厳しい(代表者に対する慰安と主張する可能性もありますが、、、)のは当然ですが、本件で重要なことは重加算税が課されているところです。
 
重加算税は事実を隠蔽または仮装して申告をした場合に課されるものですが、裁判所が重加算税を認容した理由として「甲に対する貸付金であることを前提に、その貸付けによって生じた本件各利息額が雑収入として益金の額に算入されているところ、原告らは、本件各当初申告において、本件各支出額が原告らの交際費であるかのように仮装することにより、上記貸付金を貸借対照表の資産の部に計上せず、その結果、貸付金に係る本件各利息額を隠ぺいしたものである。」と判示しています。
 
税務調査ではよくあることなのですが、代表者の私的な費用を法人の経費に計上していた場合、本来は代表者の賞与認定されるところを代表者への貸付金として処理することを認めてくれることがあります。賞与認定されると所得税も課税されてしまいますから、それを回避するために代表者への貸付金処理するわけです。
 
本件でもそれが行われたわけですが、それが貸付金を交際費に仮装したと判断されています。この部分に関しては個人的に納得がいかないところですが、この判例においては重加算税が課されております。
 
皆様は、要らぬ経費を入れたことにより重加算税まで課されることになる事案があるということを念頭に置いて経費処理していきましょう。

  
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