からくり民主主義軽妙であるが辛辣。抜群におもしろいノンフィクションです。

ある出来事に対して、大上段に「この問題の本質は、こうだ!」と書けたら、簡単でしょうね。
テレビニュースをはじめ、多くのルポルタージュは、そんな感じです。「これが正義で、これが悪者!コイツが悪さしたから、犠牲者がでてかわいそう!コイツ許さん!」物事は単純化され、事件はあっという間に消化されてしまいます。
この作品は違います。

なにせ本人が「私の取材はいつも出遅れます」というだけに、その決めつけ期間が過ぎたあとでの、取材現場の冥利を感じることができます。うろうろと取材する筆者の姿が目に浮かぶようで、おもしろいし、なにより事件の本質が、いつまでもゆらゆらしている、その頼りなさを書き出しているところが最高。

題材も、それぞれ興味深く、原発、基地問題、ムツゴロウとか(下記引用参照のこと)。
特に原発に依存して暮らす人々と、現在の福島の惨状を重ねると、非常に興味深く、大きな問題が見えてくる気がします。この著書では、話題の浜岡原発を取材しています。原発問題は、単純に被災者=被害者というわけではないのです(詳細は省略ね)。
で、なんと解説は村上春樹。なんてことないですが。

で、以下はがんばりました。それぞれの章立てと、センテンスの引用です。

第1章 親切部隊 ――小さな親切運動
彼女によれば、席ゆずりのコツは「まず自分が座ること」だそうで、必ず座って年寄りが来るのを待ち構える。思いやりと気迫にあふれる親切である。

第2章 自分で考える人びと ――統一教会とマインドコントロール
世の常識にとらわれず、疑問を持ち、自分で考えた。
生き方としては正しいわけである。内容は別として。

第3章 忘れがたきふるさと ――世界遺産観光
大切なものって一体何?あらためて考えるとよくわからない。観光客があふれ、豊かな白川村にいると余計わからなくなる。それもそのはず、私たちは「ふるさと」を見ているのではなく。「ふるさと」という視点でひとつを見ようとしているだけなのだから。そのひとつが何だかわからないので、観光客は家に入りこみ、ウンコまでしてしまうのである。

第4章 みんなのエコロジー ――諫早湾干拓問題
問題はみんなでまわして先送り。

第5章 ガリバーの王国 ――上九一色村オウム反対運動
オウムの聖地、理想の開拓地、共産主義社会。
考えてみれば、どれも現実には居場所のないメルヘンである。

第6章 反対の賛成なのだ ――沖縄米軍基地問題
土地を奪われたという「犠牲」は、今はすっかり「特権」なのだった。

第7章 危険な日常 ――若狭湾原発銀座
大衆とともにある共産党が共産党らしく活躍しているが、トラブルのたびに、申し入れに出かけるのは骨である。手取り一八万円の町議の給料では、とても生計は立てられず、高浜町の共産党町議はやむなく、原発の孫請け作業を請け負っていた。

第8章 アホの効用 ――横山ノック知事セクハラ事件
「そんなごっつ儲かるんなら、わたしもケツさわらしたる」
大阪のおばさんは怒る。おばさん世論のオチは強烈である。

第9章 ぶらさがり天国 ――富士山青木ヶ原樹海探訪
「自殺するなら樹海です。大木の下は気分がいいし、人知れず消える。これは絶対おすすめです」
古老はさわやかに微笑み、私を誘うのであった。

第10章 平等なゲーム ――車椅子バスケットボール
障害者が書いた『五体不満足』が大ベストセラーとなった。障害を不幸としてとらえない彼のその爽やかさぶりが大いに受けたのである。おかげで性格が爽やかでない障害者は「何でお前は暗いのか?」と言われるようになった。

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