原題は「Fruitless Fall(実りなき秋)」なので、レイチェル・カーソンの「Silent Spring(沈黙の春)」とかけているのだと思います。

自然破壊に対する啓蒙書なのか、はたまたミツバチ大量死という事件の謎解きミステリーなのか。
どちらにもおさまらない、幅広く、深い視点で書かれた本です。

はじめに語られる「ミツバチの蒸発、そして大量死」の事実。
なんと北半球の4分の1ものハチが死に絶え、CCD(Colony Collapse Disorder、蜂群崩壊症候群)と名付けられます。

こういったコロニーは、花蜜が流れて蜂蜜を潤沢に作り出したあとや蜂児を長い間育てたあとは、強勢で生産性の高い巣のように見えている。だが秋や初冬になると……非常に短期間のうちに変化が生じ、山のような蜂蜜を残したまま、蜂の姿が消えてしまうんだ。

そして原因の追究がはじまります。
農薬、ダニと天敵、殺虫剤、遺伝子組み換え、宇宙人(笑)、新種のウィルス――様々な推理がされていき、それら原因がいくつも重なった複合汚染が考えられます。
さらに読み進むにつれて、人間の「経済社会」に組み込まれてしまったミツバチ社会の悲劇を目の当たりにすることになります。

急激に、静かに破壊されていくミツバチ社会。
しかし、「沈黙の春」の時代より、さらに複雑化した現代、「じゃあ農薬禁止ね」と、それだけでは何の解決になりません。
では、ダニを絶滅させる?殺虫剤禁止?更なる遺伝子組み換え?
進化という仕組みが到達した、現在の自然。その複雑性、多様性。
そのことに、人間は前よりも深く気づいています。
そして、人間社会だけでも、経済の複雑性はどうにも制御のきかないものです。
すべては場当たり的な対処でしかないことに気づきます。

経済性のよい作物の「受粉要員」としてだけレンタルされるミツバチたち。
彼らをドラッグ漬けにして限界まで使い込み、疲弊させる人間の経済社会。
誰も、絶望的な破滅を止めることができないのでしょうか?

ある養蜂家は語ります。

私たちが自然のすべてを理解することは決してないだろう。けれども、自然の慈悲深い心配りと庇護のもとで暮らし働くすべを学ぶことはできる。

そして筆者は絶望に瀕しながらも、我々にはまだ、選択する時間が残されている、と語りかけます。

何を選ぶかはあなたの自由だ。私たちにはまだ、どんな世界で働き、暮らしたいかを選ぶ余地が残されている。もしかしたら、毒を盛り、すみかを破壊して花粉媒介者を排除しても、人間はなんとかやっていけるかもしれない。人間蜂として暮らすこともいとわないほど貧しく必死な人たちがじゅうぶんにいて、子供たちにタバコのフィルターを握らせて木のこずえ高く登らせ続けるかもしれない。そして、こんな方法で実をつけた果物が買えるほど豊かな人はいつだって存在するだろう。

人間の罪深さというだけの、月並みな論点に終始せず、進化の厳密さ、無情さにまで思いを巡らせてくれる。
さらに、解説ではニホンミツバチのことと、狂牛病(BSE)のことにも触れられています。
このBSEに関する部分だけでも、ずしりとくる事実の重みを感じることができるでしょう。

良書です。ぜひ読んでみてください。

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