009アメリカの社会とか町の風景を想像するとき、絶対に思い浮かばないことがあります。
それは、「白人がびくびくしている街角」です。
アメリカは自由な国のはずなのですが、黒人がびくびくしている国だということを、心の底で知っているからでしょう。
結局アメリカは「白人の国」なのでしょうか。WASPが有色人種とインディアンを取り仕切る。マイノリティへの差別はなくならない。

この映画の中では、黒人と白人が入れ替わっています。
原題は「WHITE MAN」そのものズバリですね。
例えば、召使いは白人で、金持ちで社会を動かしているのは黒人という具合です。貧乏なのは白人です。浮浪者も、スラムをつくっているのも、警官に殴られるのも、こづかれるのも、理由なく射殺されるのも、みんな白人です。
つまり、これらのフィクションはすべて、現実の裏返しということができます。

ああそうか、差別というのはこういうことだったのだな。

いつのまにか出来上がってしまっている観念を、見る人間に実感させるということで、この映画は成功しています。

ずっと前に、大学で黒人の推薦入学枠をもうけているのは、白人に対する「逆差別」だということで訴訟になったことがあります。
なんで「黒人」を特別扱いするのだ、これではちゃんと勉強している白人がかわいそうではないか、という議論でした。
確かに、どんな場であっても特定の人間を保護することは、差別にもなりますし、保護されることで生まれる利権や、それに対するねたみが生じます。

弱者に対する配慮はいつでも必要なのですが、差別というものが社会などの制度に組み込まれると、ろくなことがありません。
しかし、それはどうもいつの時代になっても解決できないのではないかと、やるせない気持ちになったりもします。

[追記]
いい映画だと思うのですが、DVD化されてませんね。内容的に、もう黒人差別なんて時代じゃないし、てとこでしょうか。
でも、かつては理不尽な差別があったこと、そしてかたちこそ違え、理不尽な差別があることを、肝に銘じておかなければいけません。

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