アリの生体から「2・6・2の法則」というのがよく知られています。アリを観察していると20%のアリがよく働き、60%のアリは普通に働き、残り20%のアリは働かないアリという割合でいるという法則です。アリというのは働き者の代名詞のように見られているのですが、働きアリにも働かない働きアリがいるようです。

それを北海道大学の長谷川英祐准教授らがその現象を実験で立証したという新聞の記事がありました。その実験は150匹のアリを採ってきて、他のメンバーに役立つ作業を労働とみなし、自分のための行動は非労働とみなして、1匹につき72回分の行動をチェックするというものです。その結果、

→ 労働が7回以下の働かないアリ・・・10%
普通に働いているアリ・・・・・80%
28回以上働くアリが・・・・・10%

という割合になったということです。

これは2・6・2の法則と割合は少し違いますが、確かに働きアリなのに働かないアリがいるということです。しかも面白いことに、またよく働くアリばかりを集めて飼育観察をすると、やはりほとんど働かないアリが10%の割合で出てくるということです。という事は、「怠け者アリ」というレッテルを貼られた”働かない”という行動は性格ではないのか?これは働き始めるための刺激の感度(反応いき値)が個体ごとに違い、そのいき値の低い「働き者アリ」が先に働きだし、結果的に「怠け者アリ」が出てきてしまうと長谷川准教授は語っております。

つまり反応いき値とは、例えば”机の上が片付いていない”という判断はその人によって違いがあり、それを片付けようという行動に出る状況が違うということで、机の上に何か少しでも物が転がっていると”片付いていない!”と判断し片付け始めるという人も居れば、広々とした机の上が、A4サイズの書類二枚程しか置けなくなっていても、”片付いていない!”と判断せずその小さな面積で仕事をする人、つまり反応いき値が非常に高いという事です。

本来、全てのアリがバリバリ働き疲れ果ててしまっていると、突然やってくる不測の事態に対応するアリが居なくなり絶滅リスクの回避という事で、「あえて効率の低い仕組みを採用している」(長谷川准教授)という仮説をたてておられます。また反応いき値という感度がバラバラで多様性がある方が、巣を長く存続させる重要な戦略となっているとも語られています。

アリの世界での話という事なのですが、会社経営における組織や人事に置換えて考えると、少し重なって見える事があります。昨今、企業は利益を上げるためにリストラを進めてきたという企業は多くあります。アリの法則からいうとまずは経費削減で全体の働かない10%のリストラ。効率をより追求し、次に残りの10%のリストラ・・・。それをやり続けた結果、企業内部に多様性が失われ、結局、環境変化に対応できない企業が多くなり、上場会社であっても倒産又は解体の危機に陥っているというのも、非常に重なって見えます。

 「働かない」という働き、近視眼的には非常に不必要な働きの一種にしか見えませんが、少し長い期間で見ると重要な働きなのかもしれません。企業経営的に言うと、いかにそういった「働かない」人材を雇うのか?というより、いかに人の「多様性」を増加させるかということになると思います。色々な”反応いき値”を持った人財をいかに雇って居られる企業になれるか?鶏が先か卵が先か・・・。しかし、企業は常に余裕に対する支出もできるよう頑張っていきたいものです。

やこやこ

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