まずは帯に、センセーショナルな言葉が並びます。

「売春島」「偽装結婚」「ホームレスギャル」「シェアハウスと貧困ビジネス」

どれもが平和で安全な、現代日本にある「現実」ということです。
では、この「現実」を、どう解釈し、どう向き合えばよいのか。
見て見ぬふりをする?それともいっそ、どっぷりと浸かる?

ルポルタージュのかたちをとりながら、各章で語られる「周縁的な存在」たち。

  • マクドナルドで眠る少女
  • シェアハウスに集う貧困者
  • 生活保護受給
  • デリヘルとスカウト
  • ギャンブル・脱法ドラッグ
  • 右翼と左翼・暴力
  • グローバル化と偽装結婚
  • 中国エステ経営

そこにある、汚いもの。あってはならないもの。
「漂白される」――とても深いタイトルをつけたなあと思う。
センセーショナルな短編ものとして、あとは自分で考える材料にするといいでしょう。
個人的に「生活保護受給マニュアル」の原本は、かなり衝撃的でした。

「私たちの社会は、強い規範と、その規範が完全には達成されない矛盾のなかで営まれている。
暴力的なのに暴力的であってはならない。カネに汚いのにカネに汚くあってはならない。怠惰なのに怠惰であってはならない。誰にも承認されない存在であるのに承認されなくてはならない。性的であるのに性的であってはならない。不合理ででたらめなのに、不合理ででたらめであってはならない……。」

最後に、この本の「学術的」価値について。

冒頭で網野善彦を持ち出してくるあたり、「おっ、やるじゃん」て感じですが、著者が(自分で)言うほどに学術的なアプローチはされていないと思う。
対象が広い割には、考察がもうひとつ深くない。ある種の普遍的な要素を抽出するには、まだまだサンプル数も、対象への突込みも足りないということでしょう。
「学術的」であろうとするためか、図説もところどころに挿入されていますが、首をかしげたくなるような大雑把さです。
いよいよテーマの核心に迫っていったんだけど、最後はエッセイ風な感想で流されちゃった、みたいな感じです。

ルポルタージュとしては、とても良い出来なのだから、アカデミズムに媚を売る必要はなかったんじゃないかと、少し残念な気がしました。

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