事業収益は、言うまでもなく「売上高-総経費」で計算されます。しかし、売上にしても総経費にしても、どの額を売上としているのか?どの額を経費としているのかで、見た目の利益額は大きく違ってきます。税務調査の時に、一番に調査される内容の多くは売上の調査です。税務の調査官は、まず「決算時点前後の月の得意先に出す、請求書等の売上資料を見せて下さい」と言います。何を調べたいのかというと、その決算年月日までに会計上計上していないといけない売上が計上されているかどうか?です。

 売上金額の回収が出来ていないのに、売上計上するのか?また、経費にしても然りで、まだ払ってもいないのに経費にするのか?これは経営状態を把握する、または税務申告をする上で非常に重要な会計の原則で、「発生主義」による会計処理と言います。これは、現金の出入りに関わりなく、取引の事実に基づいて経理処理を行うという原則です。

 少し会計的な内容になってしまいますが、例えば掛けで得意先に商品を販売した、という取引があったとします。これは一つの取引のように見えますが、実は二つの取引が同時

に行われた事になります。それは

①売上という収益が発生した、という取引
②売掛金をいう資産が増加した という取引

現金という勘定が全く介在しないのにもかかわらず、会計的には2つの取引があった事になります。商品を掛けで仕入れたという場合も同じで

①仕入という費用が発生した という取引
②買掛金という負債が増加した という取引

となります。「発生主義」と対極的な処理が「現金主義」です。これは上の取引でいえば、どちらも会計処理なく、売上を現金回収した時、仕入を現金支払いした時に、会計処理を行うというものです。これは取引の事実をとばして、現金取引のみの会計処理となるため、正確な損益計算ができません。しかも年度決算ではそれが認められません。

 この「発生主義」による会計処理というものは、期中に売掛金や買掛金の管理であったり、棚卸の管理、資産の償却の管理といった、「現金主義」にはない手間が多くかかり、決算締めの時だけ「発生主義」による会計処理を行い、期中は「現金主義」で会計処理、なんていう企業も多く見受けられるようです。

 しかし、年間合計での経営数値の把握ではなく、毎月の正確な経営状況を把握してこそ、会計が経営者の意思決定のためのデータとなります。つまり、現金の出入りだけでの状況判断では、将来的な資金繰りの把握はおろか、実際に会社自体で儲けが出ているのかどうかすらわからない、という状況となってしまいます。また、金融機関等の外部に対して提出する必要があった時には、全く信用のないデータとなってしまいます。

つまり、正確な月次損益の把握には、正確な「発生主義」による会計処理が行われているという事が、非常に重要なポイントとなり、もし「発生主義」で会計処理が行えていないのであれば、その状況を変えていく努力はとても重要であります。それにより、会社は強くなる。ぜひ「発生主義」による会計処理の精度を高めてみてください。経営に対する対応も大幅に改善出来ること間違いなしです。

やこやこ

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