監査一部門の清岡です。「会社の健康診断」の二回目をお届けします。

 

財務諸表を使って算出した指標は、比較分析によってその良否を判断することが多くあります。この比較分析には、時系列比較(自社の過去値)他社比較(競合他社等の数値)の2つの種類があります。

それぞれ有効性がありますが、他社比較をする場合には少し注意が必要になります。それは、企業の置かれた環境や展開している事業の方向性・優先度がまちまちであるため、まったく同じ状況や環境は存在しないからです。

 従って、他社比較を行なう場合には、単なる比較や実数の違いはあくまでも参考値として、その違いが発生している要因部分に焦点を当てることが重要となります。
それでは、今回は例として「他社比較」を使って、収益面から分析してみましょう。

 

収益面を分析するための中心は、損益計算書になります。
その中で最も総合的な指標は「総資産利益率」です。この指標は売上高経常利益率と総資産回転率の2つの指標に分解することが出来ます。総資産経常利益率をこの2つの指標に分解することによって、
自社のより全体的な課題が明確となります。
「総資産利益率」が最も総合的な指標と言われるのは、企業が事業のために使った資産で、どれくらいの利益を獲得しているかを表しているからなのです。

 

企業が事業にさまざまな資産を投下(資本の投下)したとしても、必ずしも全てが確実に回収できるとは限りません。その点から考えると、事業に対する資産の投下は、ある面でリスクを冒していることになります。ということは、そのリスクに見合う利益を獲得することが、企業経営として非常に重要な観点となります。

つまり、単純に「総資産が大きい=経営規模が大きい=優良企業」と決めつけるのではなく、投下した資産(資本)に対する効率性を見極めることが重要であり、その点を明確にしているのが、この「総資産利益率」なのです。

 

「総資産利益率」の計算式は次のとおりです。

 

実際に計算してみましょう!!

【計算例】

・A社 : 売上高1,000  経常利益120  総資産  2,000

・B社 : 売上高8,000  経常利益480  総資産16,000

 

→ A社の総資産利益率=120÷  2,000=6%

→ B社の総資産利益率=480÷16,000=3%

 

 

この計算結果から、次のことが分析できます。

売上、利益、総資産といった「規模の観点」では、B社に軍配が上がりますが、「経営全体の効率」、つまり「より少ない資産(少ないリスク)で利益を獲得する」という面では、A社に軍配が上がります。

 

このように、総資産利益率は、総合的な経営効率をみるという面で、非常に重要な指標となります。

 

それでは、もう少し具体的にみていくために計算式を分解してみましょう。

分解方法として、総資産利益率の算式の分子と分母に売上高を掛けてみます。
そうすると、次のような形に展開できます。

以上の分解結果から、「総資産利益率」を構成する要素は、「総資産回転率」と「売上高経常利益率」であることがわかります。つまり、総資産利益率を向上させるには、「総資産回転率の向上」と「売上高経常利益率の向上」が必要になるのです。

 

それでは、先ほどの例をこの分解式で改めて計算してみましょう。

【計算例】

・A社の総資産利益率

= 1,000÷2,000   × 120÷1,000

= 0.5(回転)  × 12%

 

・B社の総資産利益率

= 8,000÷16,000 × 480÷8,000

= 0.5(回転)    × 6%

この計算結果から、両社ともに総資産回転率は0.5(回転)となっているので、この観点からの両社比較による問題点は特にありません。

しかし、売上高経常利益率については、A社12%に対してB社は6%と半分になっており、この点にB社の問題点があるという目安がつきます。
単に「総資産利益率」だけを見て良し悪しを判断するよりも、多少は問題が具体化されたと思います。

更に具体的に経営活動の内容にまで落とし込んだ問題を探るには、この「利益」の観点と「回転率」の観点の両方についてその構成要素を加味した分析が必要となりますが、そちらについては次回以降で触れたいと思います。

監査一部門 : 清岡

  
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