高速道路をおりてから、神戸まで行くのに、土地勘が無いためにとても時間がかかった。
当時は高速道路は吹田が終点だったのでそこで降り、万博公園の太陽の塔を見ながら地図をひろげた。
どうやら、国道2号線を使って海沿いに行けば、神戸に着くらしい。
少し走って標識を見ると、「2号線」とある。ついてるなあと思ったら、どこで間違えたのか、道はどんどん狭くなり曲がりくねって一車線になって、とうとうなくなってしまった。
自分がどの辺にいるのかもわからないので、神戸ナンバーの車を見つけては、後を尾けていく。思えば無謀なことをしたもんだ。やがて、いつの間にか2号線を越えて、阪神西宮のあたりをうろちょろしていた。

このあたりから、震災の被害は目に見えるかたちで現れてくる。
橋ががたがたになっている。
工事のために道はすべて渋滞している。
1階の部分が駐車場になっているような建物は、2階を支える柱がぽっきりと折れ、つぶれていた。防塵マスクをして歩く人たち。リュックを背負う人も多くなり、交通整理にあたる警官が目に付いた。

いつの間にか僕は、国道43号線を走っていた。
その上をはしっていた高速道路が、きれいに落ちていた。
交通規制があり、東灘区へははいれないようになっていた。
警官に「通行止めだよ」と言われ、横道へ。崩れた家の瓦礫が道を覆って、空気はほこりまみれだった。

大渋滞だった。
復興のための大型車や自衛隊のトラック。土地勘のない他県ナンバーの車などで道が埋め尽くされていた。
バイクでなかったら、どれだけ足止めを食っていたことだろう。そういった車の間をぬうようにして先を急ぐ。
崩れた家の塀や、折れた電柱、ブヨブヨに波打った道路。倒壊を避けられた家でも、青いビニールシートで隙間を補強しているため、町のあちこちで、青い花が咲いているように見えた。
割れたモルタルのかび臭い匂いが、あたりに漂っていた。

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