5月21日。テント村の解散式をやった。
あいにくの雨であった。
それでも、今までテント村に関係した人々が集まり、閑散としていた村はにわかに賑やかになった。いろんな人が来た。元住民、ボランティア(前に追い出された人たちも)、近所の人々、マスコミ、市長さんまで来ていた。
簡単なセレモニーがあり、ボランティア代表ということで、僕があいさつした。照れた。
その後、マスコミに囲まれて、いろいろ聞かれたが、適当にうなずいておいた。
あとはお寿司だけ食べて、その場を離れた。
夕方ごろに戻ったら、なんとみんなが泣いていた。
マスコミや市長は帰った後だったが、テント村に関わった人たちが、「終わりやなあ、よかったなあ、、ありがとなあ」と、寄り添いあっては泣いている。ちょっとすごい光景ではあった。
「どこ行ってたんやあ」住民のひとりが僕を見つけて、握手してきた。
わらわらと人が集まってきて、次から次へと、握手をした。
その日から、テント村から人が消えた。

5月28日。テント村を解体した。
良い天気であった。
一日がかりで、テントや台所を壊しては燃やしたり、捨てたりした。
残った救援物資も、たくさんあった。市役所や、他の避難施設にまわそうと思ったが、どこも引き取ってくれなかった。どこも物資でいっぱいなのだそうだ。
被災地はこの時点で、「モノあまり」の状態だったのだ。
結局、全部捨てるか、燃やすことになった。
日本中の善意を、燃やしたり捨てたりしたが、他にどうしようもなかった。
片付けが終わって、みんなでビールを飲んだ。

テント村はその日から、ただの公園になった。というより、公園に戻った。
ここで起こった出来事は、すべて本当のことで、でも幻のことだった。これから先、振り返ることはあっても、ひきずっていく訳にはいかない。
新しいことが、始まるのだ。

僕は記念に中華ナベをもらった。

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